条件つきホント

「退職金には税金が掛からない」は本当?

掲載日:2026年10月14日
分野:給与・年末調整

「退職金には税金が掛からない。もらうときに、税金は引かれないらしい」。定年退職を控えた方や、そのご家族から、こんな話を耳にしたことはありませんか?

税金の言葉、先に4つだけ

この記事に出てくる言葉を、先にやさしく説明します。

  • 退職所得=退職金など、退職して一時にもらうお金にかかる所得です。
  • 退職所得控除=退職金から差し引かれる、勤続年数に応じた金額です。
  • 分離課税=退職金の税金を、給与などのほかの所得と分けて計算することです。
  • 源泉徴収=お金を受け取るとき、あらかじめ税金を差し引いてもらうことです。

結論

  1. 「退職金には税金が掛からない」は、条件つきです。退職金は退職所得控除を差し引いて計算され、控除の枠内なら税金はかかりませんが、控除を超えた部分には税金がかかります。[1][4]
  2. 控除を超えた場合は、原則として残額の2分の1が退職所得の金額になり、ほかの所得と分けて税率が掛かります。ただし、勤続5年以下の退職金では、2分の1にならない部分があります。[1][2]
  3. 「退職所得の受給に関する申告書」を出していれば、税額は支払者が計算して源泉徴収され、原則として確定申告は必要ありません。[3][4]

判定は「条件つき」です。退職所得控除の枠内なら税金はかかりませんが、控除を超えた部分には税金がかかります。根拠を順に見ていきます。

退職金の税金は、こう計算されます

退職金は、税法上は「退職所得」という所得です。

退職所得とは、退職手当、一時恩給その他の退職により一時に受ける給与及びこれらの性質を有する給与(以下この条において「退職手当等」という。)に係る所得をいう。[1]

(所得税法第30条第1項)

訳すと、こうなります。退職金のほか、退職して一時にもらうお金が退職所得です。

課税の対象になるのは、退職金の全額ではありません。退職所得の金額は、次の形で計算します。

退職所得の金額は、その年中の退職手当等の収入金額から退職所得控除額を控除した残額の二分の一に相当する金額(当該退職手当等が、短期退職手当等である場合には次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める金額とし、特定役員退職手当等である場合には当該退職手当等の収入金額から退職所得控除額を控除した残額に相当する金額とする。)とする。[1]

(所得税法第30条第2項)

訳すと、こうなります。税金のもとになるのは、収入金額から「退職所得控除額」を引いた残りの2分の1です。ただし、勤続5年以下の退職金など、2分の1にならないケースが、この括弧書きに定められています(落とし穴で説明します)。まず控除が用意されている点が、この記事の要点です。

退職所得の金額が決まったら、税率は退職金だけで掛けます。

居住者に対して課する所得税の額は、その年分の課税総所得金額又は課税退職所得金額をそれぞれ次の表の上欄に掲げる金額に区分してそれぞれの金額に同表の下欄に掲げる税率を乗じて計算した金額を合計した金額と、その年分の課税山林所得金額の五分の一に相当する金額を同表の上欄に掲げる金額に区分してそれぞれの金額に同表の下欄に掲げる税率を乗じて計算した金額を合計した金額に五を乗じて計算した金額との合計額とする。[2]

(所得税法第89条第1項)

訳すと、こうなります。給与などの税金のもと(課税総所得金額)と、退職金の税金のもと(課税退職所得金額)は、分けて税率を掛けて計算します。退職金が多いからといって、給与と合算して税率が上がることはありません。国税庁も、同じ点を説明しています。

退職所得は、原則として他の所得と分離して所得税額を計算します。[4]

(国税庁タックスアンサー「No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)」)

この計算のしかたを、分離課税といいます。

非課税になる「退職所得控除」

退職所得控除の額は、勤続年数で決まります。所得税法30条第3項は、次のとおり定めています。

政令で定める勤続年数(以下この項及び第七項において「勤続年数」という。)が二十年以下である場合四十万円に当該勤続年数を乗じて計算した金額[1]

(所得税法第30条第3項第1号)

勤続年数が二十年を超える場合八百万円と七十万円に当該勤続年数から二十年を控除した年数を乗じて計算した金額との合計額[1]

(同条第3項第2号)

訳すと、こうなります。控除額は、勤続20年までなら「40万円×勤続年数」、20年を超えると「800万円+70万円×(勤続年数−20年)」です。国税庁も、同じ式を表にして説明しています。

退職所得控除額の計算の表勤続年数(=A)退職所得控除額20年以下40万円×A(80万円に満たない場合には、80万円)20年超800万円+70万円×(A-20年)[4]

(同ページ・退職所得控除額の計算)

控除額の計算には、2つの決まりがあります。

1つ目は、勤続年数に1年未満の端数があるときは、切り上げることです。国税庁の数値例です。

勤続年数は11年になります。(端数の2か月は1年に切上げ)40万円×(勤続年数)=40万円×11年=440万円[4]

(同ページ・例1)

2つ目は、計算した控除額が80万円に満たないときは、80万円とされることです[1]。

では、退職金の額が控除の枠内に収まれば、どうなるか。収入金額から控除額を引くとゼロになるので、退職所得の金額は生じません。退職所得の金額に税率を掛けて税額を計算しますから、退職所得の金額がゼロなら、税金もかかりません。

なお、退職金には住民税もかかります。住民税は、所得税と同じ退職所得の金額をもとに、ほかの所得と分けて計算されます[5]。退職所得の金額がゼロなら、住民税もかかりません。

勤続年数と退職金の額で、税金が生じるかが変わる

架空の2人で見てみます。

人物退職金(収入金額)退職所得控除額退職所得の金額
Aさん・勤続10年400万円400万円0円
Bさん・勤続30年2,500万円1,500万円500万円

Aさんの控除額は、40万円×10年=400万円です。退職金の400万円と同額なので、控除の枠内。退職所得の金額はゼロで、税金はかかりません。

Bさんの控除額は、800万円+70万円×10年=1,500万円です。退職金2,500万円から引くと、残額は1,000万円。2分の1をかけた500万円が、退職所得の金額になります。

Bさんには税金が掛かります。税率は、所得の額に応じた段階制です。

百九十五万円以下の金額百分の五 百九十五万円を超え三百三十万円以下の金額百分の十 三百三十万円を超え六百九十五万円以下の金額百分の二十[2]

(所得税法第89条第1項の税率表・一部)

Bさんの退職所得500万円に当てはめると、195万円×5%+135万円×10%+170万円×20%=57万2,500円が所得税の額です。このほか、復興特別所得税が掛かります[4]。

2人を比べると、税金の有無を分けているのは、退職金の額と控除額の関係です。控除の枠内に収まれば税金はかからず、超えた部分には税金がかかります。「退職金には税金が掛からない」が成り立つのは、控除の枠内だけです。

落とし穴

知っておきたい落とし穴が、4つあります。

1つ目は、「退職所得の受給に関する申告書」の仕組みです。退職金をもらう人は、受け取るまでに、支払者を経由して税務署長に申告書を提出することとされています。

国内において退職手当等の支払を受ける居住者は、その支払を受ける時までに、次に掲げる事項を記載した申告書を、その退職手当等の支払者を経由して、その退職手当等に係る所得税の第十七条(源泉徴収に係る所得税の納税地)の規定による納税地(第十八条第二項(納税地の指定)の規定による指定があつた場合には、その指定をされた納税地)の所轄税務署長に提出しなければならない。[3]

(所得税法第203条第1項)

第一項の規定による申告書は、退職所得の受給に関する申告書という。[3]

(同条第6項)

訳すと、こうなります。退職金をもらう人は、もらうまでに「退職所得の受給に関する申告書」を、勤務先などを通じて税務署に提出します。この申告書を出していれば、税額は支払者が計算して源泉徴収されます。

退職金等の支払者が所得税額および復興特別所得税額(令和9年以後は所得税額、防衛特別所得税額および復興特別所得税額。以下同じです。)を計算し、その退職手当等の支払の際、退職所得の金額に応じた所得税等の額が源泉徴収されるため、原則として確定申告は必要ありません。[4]

(同ページ・申告書を提出している人)

2つ目は、申告書を出さずに退職金をもらうと、いったん多めに税金が引かれることです。

退職金等の支払金額の20.42パーセントの所得税額および復興特別所得税額が源泉徴収されますが、受給者本人が確定申告を行うことにより所得税額および復興特別所得税額の精算をします。[4]

(同ページ・申告書を提出していない人)

訳すと、こうなります。退職金の20.42%が、控除を差し引かないまま差し引かれます。控除の枠内だったはずの人ほど、確定申告をすれば戻る額が大きくなります。

3つ目は、控除額の計算が変わるケースがあることです。

前年以前に退職金を受け取ったことがあるときまたは同一年中に2か所以上から退職金を受け取るときなどは、控除額の計算が異なることがあります。[4]

(同ページ・注2)

同じ年に2か所から退職金が出る予定がある人や、前年にも退職金をもらった人は、控除の額が先の式どおりにならないことがあります。判断に迷うときは、税務署の相談窓口で相談できます。

4つ目は、勤続5年以下の退職金では、2分の1にならない部分があることです。役員等として勤続5年以下の人の退職金(特定役員退職手当等)は、控除を引いた全額が退職所得の金額になり、2分の1の計算は行われません。役員以外の勤続5年以下に当たる退職金(短期退職手当等)は、控除を引いた額のうち300万円を超える部分が2分の1になりません。国税庁の説明では、次のとおりです。

退職金の額から退職所得控除額を差し引いた額が退職所得の金額になります(上記計算式の2分の1計算の適用はありません。)[4]

(同ページ・注1「退職手当等が「特定役員退職手当等」に該当する場合」)

退職金の額から退職所得控除額を差し引いた額のうち300万円を超える部分については、上記計算式の2分の1計算の適用はありません。[4]

(同ページ・注2「退職手当等が「短期退職手当等」に該当する場合」)

訳すと、こうなります。勤続年数が短いほど控除は小さくなりますが、その分、2分の1の計算がついてこない場合があります。「控除を引いた残りは必ず半分になる」とは限りません。

こうすればいい

状況考えること
退職金をもらう前「退職所得の受給に関する申告書」を勤務先に出します。税額は支払者が計算して源泉徴収されます[3][4]
控除の枠内か気になる勤続年数(1年未満の端数は切上げ)で控除額を計算し、退職金の額と比べます[1][4]
申告書を出さずにもらった退職金の20.42%がいったん引かれます。確定申告で精算できます[4]
同じ年に2か所以上・前年にもらった控除額の計算が変わることがあります。税務署の相談窓口に相談できます[4]

まとめ

「退職金には税金が掛からない」は、条件つきです。

  • 退職金からは、まず勤続年数に応じた退職所得控除が引かれます。控除の枠内なら、税金はかかりません[1][4]。
  • 控除を超えた場合は、原則として残額の2分の1が退職所得の金額になり、ほかの所得と分けて税率が掛かります。勤続5年以下の退職金では、2分の1にならない部分があります[1][2][4]。
  • 「退職所得の受給に関する申告書」を出していれば、税額は支払者が計算して源泉徴収され、原則として確定申告は不要です。出さないと、退職金の20.42%がいったん引かれます[3][4]。

まずは、勤続年数から控除額を計算して、退職金の額と比べてみてください。


出典

※ 本文は2026年10月13日時点の法令・公式情報に基づきます。出典は、法令(e-Gov)・国税庁の公式資料を基本としています。公開後に訂正が生じた場合は、訂正記録をこの記事の末尾に掲載します(訂正ポリシー)。

本記事は掲載日時点の法令・公式情報に基づく一般的な解説です。個別の事案については、お近くの税務署または税理士にご相談ください。