半分ホント

「損金と必要経費は
同じ意味」は本当?

掲載日:2026年10月12日
分野:経費・必要経費

「損金も必要経費も、結局は同じでしょ」。個人事業主から会社の経営担当者まで、こんな話を耳にしたことはありませんか?

税金の言葉、先に4つだけ

この記事に出てくる言葉を、先にやさしく説明します。

  • 損金(そんきん)=会社の利益を計算するとき、売上から引く費用や損失のこと。法人税法で使う言葉です。
  • 必要経費(ひつようけいひ)=個人の所得を計算するとき、収入から引く費用のこと。所得税法で使う言葉です。
  • 益金(えききん)=会社の売上など、利益を増やすお金のこと。法人税法で使う言葉です。
  • 総収入金額(そうしゅうにゅうきんがく)=個人の売上など、所得を増やすお金の合計のこと。所得税法で使う言葉です。

結論

  1. 半分ホントです。売上から費用を引いて利益を決める、という考え方は同じです。
  2. ただし、言葉は法律が違います。「損金」は法人税法で使う法人(会社)の言葉、「必要経費」は所得税法で使う個人の言葉です。[1][2]
  3. そして、引ける範囲は「何でもよい」ではありません。それぞれの法律が、引ける費用の範囲を決めています。[1][2]

会社の「損金」は、法人税法が決めています

会社の利益に対する税金は、法人税です。法人税法の第22条は、会社の所得の金額を「益金の額から損金の額を控除した金額」と定めています。

内国法人の各事業年度の所得の金額は、当該事業年度の益金の額から当該事業年度の損金の額を控除した金額とする。

少し堅い文章なので訳すと、会社の利益は、売上などの益金から、損金(費用や損失)を引いて計算する、という意味です。[[1]](#ref-1)

どんなお金が損金になるかも、同じ第22条第3項が決めています。

内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の損金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、次に掲げる額とする。 一 当該事業年度の収益に係る売上原価、完成工事原価その他これらに準ずる原価の額 二 前号に掲げるもののほか、当該事業年度の販売費、一般管理費その他の費用(償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除く。)の額 三 当該事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るもの

訳すと、こうなります。損金になるのは、売上に対応する仕入れなどの原価、販売費や一般管理費などの費用、そして会社の取引から生じた損失です。ただし「別段の定めがあるものを除き」とあって、ほかの条文で「これは引けません」と決まっているものは引けません。[[1]](#ref-1)

また、第22条第4項は、計算の方法を定めています。

第二項に規定する当該事業年度の収益の額及び前項各号に掲げる額は、別段の定めがあるものを除き、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従つて計算されるものとする。

訳すと、益金や損金の金額は、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準(会計のきまり)に従って計算します、という意味です。自由な感覚で金額を決めてよいわけではありません。[[1]](#ref-1)

個人の「必要経費」は、所得税法が決めています

個人事業主などの所得に対する税金は、所得税です。所得税法の第37条は、必要経費を次のように定めています。

その年分の不動産所得の金額、事業所得の金額又は雑所得の金額(事業所得の金額及び雑所得の金額のうち山林の伐採又は譲渡に係るもの並びに雑所得の金額のうち第三十五条第三項(公的年金等の定義)に規定する公的年金等に係るものを除く。)の計算上必要経費に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、これらの所得の総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るため直接に要した費用の額及びその年における販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用(償却費以外の費用でその年において債務の確定しないものを除く。)の額とする。

訳すと、こうなります。個人の事業などの所得では、売上原価や、売上を得るために直接かかった費用、販売費・一般管理費などの業務の費用が、必要経費になります。ここにも「別段の定めがあるものを除き」があり、引ける範囲は所得税法が決めています。[[2]](#ref-2)

見てのとおり、法人税法第22条第3項と所得税法第37条第1項は、引ける費用の種類(原価・販売費・一般管理費など)がよく似ています。考え方が同じであることは、条文からも読み取れます。

使い分けの落とし穴

場面使う言葉根拠の法律
会社の法人税の所得計算(法人税申告)損金(益金から差し引くもの)法人税法[1]
個人の事業などの所得計算(確定申告)必要経費(総収入金額から差し引くもの)所得税法[2]

このほかに、3つの注意があります。

1つ目は、損金は税務上の言葉で、会計の言葉と同じではないということです。決算書に書くのは「費用」や「損失」で、そのまま損金にならないものもあります。申告のときに、会計と税務の差を調整します。

2つ目は、同じ経費でも、引けるかどうかの判断は別の決まりにあるということです。第22条第3項も第37条第1項も「別段の定めがあるものを除き」と始まります。たとえば交際費の損金不算入(租税特別措置法第61条の4)は、法人だけのきまりです。個人事業主の必要経費には、同じ上限はありません。[3]

3つ目は、家事と事業の分け方です。家事上の経費など、所得税法第45条第1項第1号が定める家事関連費は、必要経費に算入できません。どこまでが事業の費用か、帳簿で分けておくことが大切です。[4]

こうすればいい

場面考え方
言葉を選ぶ会社なら「損金」・個人なら「必要経費」を使います。意味のイメージはそろえて、言葉は分けます。
引けるか迷ったら第22条第3項・第37条第1項の費用の種類に当てはまるかを、まず確かめます。そのうえで、ほかの条文に制限がないかを確かめます。
迷ったら顧問の税理士に相談してください。

まとめ

「損金も必要経費も同じ」という噂は、半分ホントです。売上から費用を引いて利益を決めるという考え方は同じです。ただし、損金は法人税法・必要経費は所得税法の言葉で、引ける範囲はそれぞれの法律が決めています。言葉をそろえて使えば、帳簿も申告書も読みやすくなります。


出典

※ 本文は2026年10月11日時点の法令・公式情報に基づきます。出典は、法令(e-Gov)・国税庁の公式資料を基本としています。公開後に訂正が生じた場合は、訂正記録をこの記事の末尾に掲載します(訂正ポリシー)。

本記事は掲載日時点の法令・公式情報に基づく一般的な解説です。個別の事案については、お近くの税務署または税理士にご相談ください。