条件つきホント

「出張の日当は
いくら支給しても非課税」は本当?

掲載日:2026年10月10日
分野:給与・年末調整

「出張の日当は非課税だから、いくら支給しても税金がかからないらしい」。出張の多い従業員を持つ事業主や、経理を任された担当者から、こんな話を耳にしたことはありませんか?

税金の言葉、先に4つだけ

この記事に出てくる言葉を、先にやさしく説明します。

  • 日当(にっとう)=出張中の食事や身の回りの雑費にあてるお金。ホテル代や交通費とは別に、1日いくらと決めて支給します。
  • 非課税=給料とみなさず、税金をかけないこと。
  • 旅費規程=出張のときの交通費・宿泊費・日当を、いくら支給するか会社の規則として決めたもの。
  • 給与として課税=日当という名目でも、中身が給料だとみなされると、所得税がかかります。

結論

  1. 出張の日当は、非課税になる「範囲」が決まっています。範囲内なら税金はかかりません。[1][2]
  2. 「いくら支給しても非課税」ではありません。非課税の範囲を判定するときは、①社内のバランス(ほかの社員と比べたときの額)②同業種・同規模の他社が一般的に支給している水準、という2つの事項が考慮されます。[2]
  3. 通常必要な範囲を超える部分は、日当という名目でも給与として税金がかかります(範囲内の部分は非課税のままです)。

判定は「条件つき」です。出張の日当は非課税になりますが、「いくら支給しても」という条件がつくと、うそになります。次から、根拠を順に見ていきます。

なぜ出張の日当が非課税になるのか

そもそも、出張の旅費が非課税になる根拠は、所得税法9条1項4号です。所得税を課さない所得として、次のとおり定めています。

給与所得を有する者が勤務する場所を離れてその職務を遂行するため旅行をし、若しくは転任に伴う転居のための旅行をした場合又は就職若しくは退職をした者若しくは死亡による退職をした者の遺族がこれらに伴う転居のための旅行をした場合に、その旅行に必要な支出に充てるため支給される金品で、その旅行について通常必要であると認められるもの[1]

(非課税所得の規定・抜粋)

訳すと、こうなります。社員が仕事のため出張したときに、会社から支給されるお金やもので、「その旅行について通常必要」なものは、所得税をかけません。

ここまでが原則です。では「通常必要」の範囲は、どこまでなのでしょうか。ここに、日当の金額の基準が関わってきます。

「いくらまで」の基準は、どこにあるのか

結論から言うと、国は「◯円まで非課税」という金額を出していません。その代わり、どの範囲まで非課税になるかを判定するための基準を、所得税基本通達9-3に定めています。

法第9条第1項第4号の規定により非課税とされる金品は、同号に規定する旅行をした者に対して使用者等からその旅行に必要な運賃、宿泊料、移転料等の支出に充てるものとして支給される金品のうち、その旅行の目的、目的地、行路若しくは期間の長短、宿泊の要否、旅行者の職務内容及び地位等からみて、その旅行に通常必要とされる費用の支出に充てられると認められる範囲内の金品をいうのであるが、当該範囲内の金品に該当するかどうかの判定に当たっては、次に掲げる事項を勘案するものとする。(1)その支給額が、その支給をする使用者等の役員及び使用人の全てを通じて適正なバランスが保たれている基準によって計算されたものであるかどうか。(2)その支給額が、その支給をする使用者等と同業種、同規模の他の使用者等が一般的に支給している金額に照らして相当と認められるものであるかどうか。[2]

訳すと、こうなります。出張旅費のうち非課税になるのは、出張の内容(目的地・日数・宿泊の有無・役職など)から見て「その旅行に通常必要」な費用にあてる範囲に限ります。そして範囲内かどうかの判定では、次の2つの事項を考慮します。

  1. 社内のバランス:その支給額が、会社の役員・社員みんなを通じて、適正なバランスが保たれた基準で計算されているか。
  2. 外の水準との比較:その支給額が、同業種・同規模の他の会社が一般的に支給している金額に照らして相当か。

見分けの質問は、2つあります。1つ目は**「その会社のほかの社員も、同じ出張なら同じ金額をもらえるか?」**。もらえるなら、制度化された日当です。本人の給料を減らして、日当という名前に変えて渡しているだけなら、給与として課税されます。2つ目は「その金額は、同業種・同規模の会社と比べて高すぎないか?」。こちらは「高すぎない」と言えることが必要です。

いくらくらいが目安になる? 国の制度のサンプル

「基準は分かったが、実際の金額感はどこで見ればいいのか」。公開されているサンプルとして使えるのが、国家公務員の旅費制度です。

国家公務員等の旅費に関する法律施行令第11条は、宿泊を伴う出張の「諸雑費」(いわゆる日当にあたる部分)を、次のとおり定めています。

宿泊手当は、宿泊を伴う旅行に必要な諸雑費に充てるための費用とし、その額は、通常要する費用の額を勘案して財務省令で定める一夜当たりの定額とする。[3]

その一夜当たりの定額は、財務省令(国家公務員等の旅費支給規則)の別表第三に定められていて、次のとおりです[4]。

区分宿泊手当(一夜につき)
本邦(全ての地・全国一律)2,400円[4]

国の旧制度の日当は、目的地内を巡回する交通費(おおむね半額)と諸雑費(もう半額)でできていました[7]。令和7年4月からの新制度では、巡回の交通費は実費で支給し、諸雑費は宿泊を伴う出張に限って「宿泊手当」として1夜2,400円(全国一律)を支給します[3][4]。施行日は令和7年4月1日です(施行令の附則第1条[3])。新制度の全体像は、財務省の「国家公務員等の旅費制度の改正について」にまとめられています[8]。日当とは「ホテル代や交通費に含まれない、現地での雑費の前払い」だということが、ここからも分かります。

細かいルールもあります。宿泊費に朝食又は夕食が含まれる場合は定額の3分の2、朝食と夕食の両方が含まれる場合は3分の1に減額されます[4]。宿泊費そのものは、実費(上限あり)で支給されます[4]。

つまり、国の制度でさえ、雑費として定額にしているのは1夜2,400円です。ホテル代や交通費とは別に日当を1日1万円・2万円と支給するのは、国のサンプルよりかなり上の水準だということが、この1行で分かります。ただし、この2,400円は宿泊を伴う出張の手当であって、日帰り出張の日当の相場を示すものではありません。民間に「2,400円まで」との上限があるわけでも、これが非課税の安全圏だという意味でもありません。あくまで「通常必要な雑費」の感覚をつかむための、公開された実数として示しています。

もう一つ、この改正から読み取れる流れがあります。交通費と宿泊費は実費精算に移り、旧「日当」も、巡回交通費の部分は実費になり、残る諸雑費だけが「宿泊手当」として定額に縮まりました。公務員の旅費は、金額を決めて支給する定額方式から、実際にかかった費用を支給する実費方式へ寄ってきているように映ります[7][8]。定額の日当は、「実費では精算できない雑費」に限って残る、という形です。民間の旅費規程を見直すときも、同じ方向の考え方(定額の日当の範囲を絞り、それ以外は実費で精算する)が、非課税の範囲を説明しやすくする近道になります。

民間企業では、いくら支給しているか

「民間の水準」の裏付けになる公開データもあります。財務省が民間企業に出張旅費規程を聞いたアンケート(回答551社・令和5年8月報告書)では、国内出張の日当について次の結果が出ています[5]。

項目(国内出張の日当・回答551社。金額は支給する487社の平均)結果
日当を支給しない会社11.6%(1割超)[5]
1日の支給額(平均)の平均2,621円(2,000〜2,499円とする会社が最多・25.1%)[5]
支給額の最低額(平均)1,780円[5]
支給額の最高額(平均)3,786円[5]
支給の要件(複数回答)往復行程(距離)で判断 49.4%・宿泊の有無で判断 44.8%[5]

読み方はこうなります。日当を支給している会社の1日の額は、2,000円台が中心です。役職が上がると区分ごとに上がり、いちばん高い区分の日当が5,000〜9,999円という会社も15.0%あります[5]。国の宿泊手当(1夜2,400円)と民間の日当の平均(1日2,621円)は、単位は違いますが、どちらも数千円台です。

もっとも、これは「2,621円までしか支給できない」という意味ではありません。日当の額は、旅費規程という形で各会社が決めます。決めた額が、基本通達9-3の2つの事項(社内のバランス・同業種同規模の他社の水準)を考えて妥当かどうかで、非課税か給与かが分かれます[2]。

なお、民間のシンクタンク(株式会社産労総合研究所)が実施した2025年度の出張旅費調査(一般企業3,000社に調査・回答161社。以下、民間調査として参考までに示します)でも、旅費の中身の実数が分かります。国内宿泊出張の宿泊料(定額支給)は、一般社員で全地域一律8,878円・大都市圏など最高地では11,262円。実費支給の場合の上限額は、一般社員で10,490円〜12,889円でした[6]。一方、海外出張の1日あたりの日当(一般社員・円建て)は、中国4,765円・東南アジア4,841円・北米5,199円でした[6]。物価高を踏まえて直近3年間で日当を増額した企業は14.9%・宿泊料は31.1%でした[6]。こうした公開された実数が、非課税の範囲を考えるときの目安になります。

給与として課税になるのは、どんなときか

反対に、日当が給与として課税になるのは、どんなパターンか。基本通達9-3の2つの事項に沿って整理します[2]。

  • 制度化されていない支給:旅費規程がなく、出張のたびに場当たり的に金額が決まる。基準が社内で共有されていないので、「適正なバランスが保たれた基準」で計算されたとは言えません。
  • 本人の給料の名目変更:基本給の一部を「日当」という名前に変えて支給する。出張がない月も同じ額が支給されるなら、出張に必要な雑費とは言えず、給与です。
  • 社内でアンバランスな額:ある役職の人だけ、同種の出張のほかの社員より飛び抜けた日当をもらっている。「社内のバランス」の基準を外れます。
  • 同業種・同規模の水準から飛び抜けた額:雑費の日当として一般の水準を大きく超える額。外の水準との比較で、相当とは言えません。

反対に、大丈夫な形はシンプルです。旅費規程を作って、運賃・宿泊費は実費(またはそれに準じる精算)、日当は1日いくらと定額を定め、それを全員に同じ計算で支給すること。規程があると、社内のバランスがとれていることを示しやすくなります。金額そのものは、同業種・同規模の他社の水準と比べて判定されます。なお、範囲を超えていた場合は、超えた部分だけが給与として課税されます。範囲内の部分まで全部課税されるわけではありません。この扱いは、所得税基本通達9-4に「その超える部分の金額」を所得の収入金額に算入すると定められているとおりです[2]。

こうすればいい

状況考えること
これから旅費規程を作る運賃・宿泊費・日当の3本立てで、日当は1日いくらと定額を定めます。金額の妥当性は、社内のバランスと同業種の水準で確認します[2]
すでに日当を支給している規程どおりの制度化された支給か、支給額の根拠が社内でそろっているかを確認します[2]
日当を上げたい・変えたい国のサンプル(1夜2,400円)も参考に、社内の他の役職とのバランスと同業種の水準を見て決めます[3][4]
迷ったら支給の実態が関わる判断なので、顧問の税理士に相談してください

まとめ

「出張の日当はいくら支給しても非課税」は、条件つきです。

  • 出張の日当は、その旅行に通常必要な範囲なら非課税です[1][2]。
  • 範囲の判定では、①社内のバランス②同業種・同規模の他社の水準、という2つの事項が考慮されます[2]。
  • 国は、非課税になる金額の上限を示していませんが、国の制度のサンプルでは1夜2,400円[3][4]・民間企業の実態調査では1日の平均が2,621円です[5]。通常必要な範囲を超える部分は、日当という名目でも給与として課税されます。

金額の基準を作るのは会社自身です。ただし、規程に書いた額がそのまま非課税になるわけではありません。社内で同じ基準を当てていること、同業種・同規模の他社と比べて高すぎないことの2点で判定されます。


出典

※ 本文は2026年10月10日時点の法令・公式情報に基づきます。出典は、法令(e-Gov)・国税庁・財務省・内閣官房の公式資料を基本とし、民間調査は※印で区別しています。公開後に訂正が生じた場合は、訂正記録をこの記事の末尾に掲載します(訂正ポリシー)。

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