「社食も商品券も、現物で渡しているから非課税」は本当?
「社員食堂の食事も、会社からもらう商品券も、物で渡しているから税金はかからない」。こんな話を聞いたことはありませんか?
この話は、半分だけ当たっています。食事については、たしかに非課税になる道があります。ただし、原則として2つの要件をどちらも満たす必要があります。商品券は、原則どおり給与として課税されます。物で渡しているかどうかでは、決まりません。
税金の言葉、先に6つだけ
この記事に出てくる言葉を、先にやさしく説明します。
- 現物給与=給料を、お金とは違う物やサービスで受け取ること
- 給与所得=会社からもらう給料や手当などの所得
- 課税=税金の計算に入れること。非課税は、入れないこと
- 食事の価額=会社がその食事にかかった費用。弁当なら購入金額
- 券面額=商品券に印刷されている金額
- 源泉徴収=給料を払うときに、会社が先に所得税を差し引く仕組み
結論
- 給与は、お金で払った分だけではありません。物や経済的な利益も、その価額が収入になります(所得税法36条1項)。[1]
- 社員食堂や弁当は、本人の負担が食事の価額の半分以上で、会社の負担が1か月あたり7,500円以下なら、給与として課税されません(令和8年4月1日以後の支給分)。[2][7]
- どちらかの要件を満たさないと、食事の価額から本人の負担を引いた残額が給与になります。[2]
- 食事代を現金で補助すると、現物の支給ではないため、補助した全額が給与になります(深夜勤務の夜食代で1食650円以下の場合を除きます)。[2][3]
- 商品券は好きな商品と引き換えられるので、金銭を渡したのと変わりません。記念品の非課税の取扱いも使えず、券面額が給与になります。[5][6]
判定は「半分ホント」です。社食や弁当は、2つの要件を満たせば非課税になります。商品券は、原則どおり給与です。「現物だから」という理由だけで、税金がかからないわけではありません。
給与は、お金で払うものだけではありません
出発点は、所得税法36条です。収入になる金額の決め方が、こう書かれています。
その年分の各種所得の金額の計算上収入金額とすべき金額又は総収入金額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、その年において収入すべき金額(金銭以外の物又は権利その他経済的な利益をもつて収入する場合には、その金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額)とする。 [1]
少し堅い文章なので訳すと、こうなります。1年間の収入は、その年に受け取るはずの金額で数えます。お金以外の物や権利を受け取ったときは、その物や権利の値段で数えます。
値段をいつの時点で決めるかは、2項に書かれています。
前項の金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額は、当該物若しくは権利を取得し、又は当該利益を享受する時における価額とする。 [1]
訳すと、受け取った時点の値段です。あとで値段が上がっても下がっても、受け取った日の値段で数えます。
国税庁は、お金以外で受け取る給与を「現物給与」と呼んでいます。
これらの経済的利益を一般に現物給与といい、原則として給与所得の収入金額とされます [4]
ここが、この記事の分かれ道です。現物給与は、原則として課税されます。非課税になるのは、特別な取扱いが決まっているものだけです。食事には、その特別な取扱いがあります。商品券には、ありません。
社食や弁当が非課税になるのは、2つの要件を満たすとき
食事の特別な取扱いは、国税庁のタックスアンサーにまとまっています。
役員や使用人に支給する食事は、次の2つの要件をどちらも満たしていれば、給与として課税されません。 [2]
その2つが、こちらです。
(1)役員や使用人が食事の価額の半分以上を負担していること。 (2)次の金額が1か月当たり7,500円(消費税および地方消費税の額を除きます。)以下であること。 (食事の価額)-(役員や使用人が負担している金額) [2]
訳すと、次の2つを同時に満たす必要があります。1つ目は、本人が食事の値段の半分以上を払っていること。2つ目は、会社が持つ分が1か月7,500円以下であること。
| 確かめること | 満たすこと |
|---|---|
| 本人の負担 | 食事の価額の半分以上 |
| 会社の負担 | 1人1か月あたり7,500円以下 |
7,500円かどうかを見るときは、消費税を除いて数えます。10円未満の端数は切り捨てます。この点も、同じページに書かれています。
この7,500円は、令和8年4月1日以後に支給する食事から適用されています。それ以前は3,500円でした。国税庁が、通達の改正と適用の開始日を案内しています。
令和8年3月31日に、食事の現物支給に係る所得税の非課税限度額を月額7,500円(改正前:月額3,500円)に引き上げる法令解釈通達の改正を行いました(令和8年3月31日付課法12−1ほか2課共同「所得税基本通達の制定について」の一部改正について(法令解釈通達))。 [7]
引上げ後の非課税限度額(7,500円)については、令和8年4月1日以後に支給する食事について適用されます。 [7]
訳すと、上限を上げる通達の改正が令和8年3月31日に行われ、新しい上限は4月からの支給分に使う、という意味です。令和8年分は、3月までに支給した食事は月3,500円、4月以後に支給した食事は月7,500円で、支給した月ごとに判定します。
同じルールが、通達にも書かれています。国税庁の質疑応答事例が、その通達を引いています。
使用者が役員又は使用人に対し食事を支給する場合に、その役員又は使用人から実際に徴収している対価の額がその食事の価額の50%相当額以上であり、かつ、使用者の負担額が月額7,500円を超えないときには、その役員又は使用人が食事の支給により受ける経済的利益はないものとして取り扱っています(所得税基本通達36−38の2)。 [3]
要件を1つでも外すと、どうなるかも決まっています。
この要件を満たしていなければ、食事の価額から役員や使用人の負担している金額を控除した残額が給与として課税されます。 [2]
訳すと、食事の値段から本人が払った分を引いた残りが、給与になります。半分以上を払っていても、会社の負担が月7,500円を超えれば課税です。片方だけでは足りません。
AさんとBさんの例で、金額を確かめる
文字で読むと分かりにくいので、2人の例で計算します。どちらも、1食500円の弁当を、月に20食支給する場合です。この節の金額は、すべて消費税を除いた額です。
| 項目 | Aさん | Bさん |
|---|---|---|
| 弁当の価額(1食) | 500円 | 500円 |
| 本人が払う金額 | 250円 | 100円 |
| 本人の負担の割合 | 50% | 20% |
| 会社の負担(1食) | 250円 | 400円 |
| 会社の負担(月20食) | 5,000円 | 8,000円 |
| 給与として課税される金額 | 0円 | 8,000円 |
Aさんは、2つの要件をどちらも満たします。本人の負担は半分ちょうどで、会社の負担は月5,000円です。この場合、食事による経済的な利益はないものとして扱われます。
Bさんは、2つの要件をどちらも満たしません。本人の負担は2割で、半分に届きません。会社の負担も月8,000円で、7,500円を超えます。この場合は、差額の400円に20食を掛けた8,000円が給与になります。
本人の負担が半分以上でも、会社の負担が7,500円を超えることがあります。たとえば1食1,000円の食事で、本人が600円を払う場合です。負担の割合は6割で要件を満たしますが、会社の負担は400円です。月20食なら8,000円になり、課税されます。
「食事の価額」には、何を入れますか
1食あたりの値段をいくらと見るかで、判定が変わります。国税庁は、2つの場合を分けて説明しています。
1 弁当などを購入して支給している場合には、業者に支払う購入金額 2 社員食堂などで会社が作った食事を支給している場合には、食事の材料費や調味料など食事を作るために直接かかった費用の合計額 [2]
訳すと、弁当なら業者に払った金額です。社員食堂なら、メニューの値段とは別に、材料費や調味料など、その食事を作るために直接かかった費用の合計です。
食堂の運営を外部の業者に委託している場合も、同じ数え方が使えるとされています。
会社などが社員食堂の運営を外部の業者に委託している場合であっても、その外部の業者に対して社内の食堂や調理場等の施設を無償で使用させ、かつ、食事の材料等を提供している場合(その外部の業者が材料等の仕入れを行うこととしている場合で、その外部の業者が会社に請求する材料費その他の費用の内訳が適正かつ明確に区分されているときを含みます。)には、上記2と同様に、食事の材料費や調味料など食事を作るために直接かかった費用の合計額を食事の価額として差し支えありません。 [2]
条件が付いています。施設を無償で使わせていることと、材料を会社が提供していること(業者が仕入れる場合は、材料費の内訳がはっきり分かれていること)です。この形なら、材料費などの実費を食事の価額としてよい、という意味です。
落とし穴1:現金で補助すると、全額が給与になる
いちばん間違えやすいのが、ここです。会社が食事を用意せず、食事代を現金で補助する形です。この形には、食事の非課税の取扱いが使えません。
使用者と飲食店との間の契約により使用人等の食事代を使用者が飲食店に支払う場合は、この「使用者が役員又は使用人に対し食事を支給する場合」に該当するものとして取り扱って差し支えありませんが、使用人等が飲食店に食事代を支払い、使用者が現金で食事代を補助する場合には、食事という現物ではなく金銭を支給するものであることから、この「使用者が役員又は使用人に対し食事を支給する場合」に該当せず、昭和59年7月26日直法6−5、直所3−8「深夜勤務に伴う夜食の現物支給に代えて支給する金銭に対する所得税の取扱いについて」に該当するときを除き、補助をする全額が給与として課税されることとなります。 [3]
訳すと、こうなります。会社が飲食店に直接払う形なら、食事の支給として扱えます。本人が店で払い、あとから会社が現金を渡す形は、お金の支給です。だから食事の非課税の取扱いは使えず、補助した全額が給与になります。
例外は、深夜勤務の夜食です。タックスアンサーにも、金額の条件が書かれています。
食事を支給するのではなく、現金で食事代の補助をする場合には、深夜勤務者に夜食の支給ができないために1食当たり650円(消費税および地方消費税の額を除きます。)以下の金額を支給する場合を除き、補助をする全額が給与として課税されます。 [2]
この650円も、同じ令和8年3月31日の通達改正で引き上げられました。改正前は300円でした。
使用者が深夜勤務に伴う夜食の現物支給に代えて支給する金銭について所得税を課税しないこととされる1回の支給額についても、同様に650円以下(改正前:300円以下)に引き上げる法令解釈通達の改正を行っています(令和8年3月31日付課法12−3ほか1課共同「深夜勤務に伴う夜食の現物支給に代えて支給する金銭に対する所得税の取扱いについて」の一部改正について(法令解釈通達))。 [7]
もう1つ、忘れがちな例外があります。残業や宿日直のときの食事です。
なお、残業または宿日直を行うときに支給する食事は、無料で支給しても給与として課税しなくてもよいことになっています。 [2]
残業中の食事を無料で出しても、課税されません。ただし、これは残業や宿日直のときの食事です。毎日の昼食を無料で出す形には、この例外は使えません。
落とし穴2:商品券は、記念品の非課税の枠に入りません
記念品には、非課税になる取扱いがあります。創業記念や永年勤続の表彰で配るものです。永年勤続の記念品は、勤続年数や地位などに照らして、社会一般的にみて相当な金額以内であることが、要件の1つです。[5]ただし、商品券はこの枠の外です。
創業記念などの記念品には、金額の要件があります。記念品の処分見込価額が1万円以下であることが、要件の1つです。
(2) 記念品の処分見込価額による評価額が10,000円(消費税および地方消費税の額を除きます。)以下であること。 [5]
そのうえで、商品券はこの取扱いの対象外だとされています。
記念品の支給や旅行・観劇への招待費用の負担に代えて現金、商品券などを支給する場合には、その全額(商品券の場合は券面額)が給与として課税されます。 [5]
訳すと、記念品の代わりに商品券を渡したら、券に書かれた金額の全額が給与です。創業記念などの記念品が1万円以下なら課税しなくてよい、という取扱いがあっても、商品券はそこに入りません。
国税庁の質疑応答事例に、創業50周年で全従業員に1万円分の商品券を配った例があります。答えは、課税です。理由も書かれています。
この取扱いを受けるのは記念品に係る経済的利益に限られるため、記念品に代えて支給する金銭については、給与等として課税の対象になります。 [6]
さらに、商品券そのものの性質が説明されています。
照会のように、会社の創業記念として商品券の支給が行われる場合、その支給を受けた各従業員は当該商品券と引き換えに、商品を自由に選択して入手することが可能となりますので、商品券の支給については金銭による支給と異ならないといえます。 [6]
訳すと、商品券があれば好きな商品を選べるので、お金を渡したのと変わりません。だから給与になる、という説明です。記念品として配る場合に限らず、商品券は原則として給与になります。
こうすればいい
やることは、食事と商品券で分かれます。
| 場面 | すること |
|---|---|
| 社員食堂・弁当 | 本人の負担が食事の価額の半分以上かを、毎月確かめる |
| 会社の負担 | 1人1か月あたり7,500円以下に収める。超えたら、会社の負担の全額が給与 |
| 食事代の現金補助 | 補助した全額を給与として扱う。深夜勤務の夜食だけは例外 |
| 商品券 | 券面額を給与に足す。記念品の非課税の枠は使えない |
食事の側で大事なのは、2つの金額を毎月そろえて記録することです。食事の価額と、本人から徴収した金額です。この2つがあれば、要件を満たしているかを後から確かめられます。
商品券の側で大事なのは、配る前に課税を前提にすることです。従業員に配る商品券は、券面額が給与になります。年末調整の前に金額が分かるように、配った日と金額を記録しておくと、あとで困りません。
まとめ
「現物で渡しているから非課税」という説明は、食事についてだけ、条件付きで当たります。食事の価額の半分以上を本人が払い、会社の負担が月7,500円以下であること(令和8年4月1日以後の支給分)。この2つを満たせば、給与になりません。
商品券は、何を買うか選べる点で、お金と変わりません。物で渡していても、給与として課税されます。商品券の券面額も給与に含めて、源泉徴収の計算をします。[5][6][8]
自社の食事の補助が要件を満たしているか、判断に迷ったときは、税理士に相談してください。
出典
- [1]所得税法第36条(収入金額)— e-Gov法令検索 確認日:2026-10-29
- [2]No.2594 食事を支給したとき— 国税庁 確認日:2026-10-29
- [3]使用者が使用人等に対し食事代として金銭を支給した場合(質疑応答事例・源泉所得税)— 国税庁 確認日:2026-10-29
- [4]No.2508 給与所得となるもの— 国税庁 確認日:2026-10-29
- [5]No.2591 創業記念品や永年勤続表彰記念品の支給をしたとき— 国税庁 確認日:2026-10-29
- [6]創業50周年を記念して従業員に支給した商品券(質疑応答事例・源泉所得税)— 国税庁 確認日:2026-10-29
- [7]食事の現物支給に係る所得税の非課税限度額の引上げについて— 国税庁 確認日:2026-10-29
- [8]No.2110 事業主がしなければならない源泉徴収— 国税庁 確認日:2026-10-29
※ 本文は2026年10月29日現在の法令・公式情報に基づきます。出典は、法令(e-Gov)・国税庁の公式資料を基本としています。公開後に訂正が生じた場合は、訂正記録をこの記事の末尾に掲載します(訂正ポリシー)。