「NISA口座の損益は
特定口座や一般口座と通算できない」は本当?
「NISA口座で出た利益は非課税だけど、特定口座や一般口座の損失と相殺できない。逆に、NISAの損失は特定口座や一般口座の利益とは相殺できない」。投資系のSNSや動画で、こんな話を耳にしたことはありませんか?
税金の言葉、先に4つだけ
この記事に出てくる言葉を、先にやさしく説明します。
- NISA(ニーサ)=株式や投資信託などの利益が非課税になる、少額投資のための制度です。
- 損益通算=利益と損失を相殺して、税金の計算のもとになる利益を減らす仕組みです。
- 繰越控除=損失を翌年以降に持ち越して、将来の利益と相殺できる仕組みです。
- 特定口座・一般口座=税金がかかる、ふつうの取引口座です。利益には税金がかかります。
結論
判定は「ホント」です。噂の2文は、どちらも本当です。次から、根拠を順に見ていきます。
NISAの利益は非課税
国税庁のタックスアンサーNo.1535は、令和6年以降のNISAを次のとおり説明しています。
令和6年以降のNISAでは、18歳以上(口座開設の年の1月1日現在)の居住者等が、非課税口座に係るつみたて投資枠(特定累積投資勘定)および成長投資枠(特定非課税管理勘定)で取得した上場株式等について、その配当等やその上場株式等を売却したことにより生じた譲渡益が、非課税となります。[3]
少し堅い文章なので訳すと、こうなります。NISA口座(非課税口座)で買った株式や投資信託は、配当でも売却益でも税金がかかりません。年間の投資上限額は、つみたて投資枠が120万円、成長投資枠が240万円です。非課税保有限度額は1,800万円です[3]。
ここから、噂の1文目の理由が分かります。特定口座や一般口座の損失は、税金の計算に入る利益(課税される利益)から差し引く仕組みです。NISAの利益は非課税で税金の計算に入らないので、差し引く相手になりません[3]。
では、NISAの側で損失が出たときの扱いはどうなっているのか。ここが噂の2文目です。
NISAの損失は「ないもの」になる
No.1535は、NISA口座で損失が出た場合の取り扱いを、次のとおり説明しています。
非課税口座で取得した上場株式等を売却したことにより生じた損失はないものとみなされます。したがって、その上場株式等を売却したことにより生じた損失について、特定口座や一般口座で保有する上場株式等の配当等やその上場株式等を売却したことにより生じた譲渡益との損益通算や、繰越控除をすることはできません(令和5年までのNISAおよびジュニアNISAにおいても同様です。)[3]
訳すと、こうなります。NISA口座で株式を売って損をしても、税金の計算ではその損失は「ないもの」として扱います。特定口座や一般口座の利益や配当と相殺することも、翌年以降に持ち越すこともできません。
この説明の根拠になる法令が、租税特別措置法37条の14第2項です。
非課税上場株式等管理契約、非課税累積投資契約又は特定非課税累積投資契約に基づく非課税口座内上場株式等の譲渡による収入金額が当該非課税口座内上場株式等の所得税法第三十三条第三項に規定する取得費及びその譲渡に要した費用の額の合計額又はその譲渡に係る必要経費に満たない場合におけるその不足額は、所得税に関する法令の規定の適用については、ないものとみなす。[1]
(NISA口座内の株式等の譲渡に関する規定・抜粋)
「ないものとみなす」は法令用語で、所得税の計算では、損失がなかったものとして扱うという意味です。だから特定口座の利益との相殺にも、翌年以降への繰り越しにも、一切使えません。
比較:特定口座・一般口座の損失は使える
同じ株式の損失でも、税金のかかる口座なら使い道があります。国税庁のタックスアンサーNo.1474は、特定口座や一般口座の「上場株式等に係る譲渡損失」を次のとおり説明しています。
上場株式等を金融商品取引業者等を通じて譲渡したこと等により生じた譲渡損失の金額(以下「上場株式等に係る譲渡損失の金額」といいます。)は、確定申告により、その年分の上場株式等の配当等に係る利子所得の金額および配当所得の金額(上場株式等に係る配当所得については、申告分離課税を選択したものに限ります。以下「上場株式等に係る配当所得等の金額」といいます。)と損益通算することができます。また、損益通算してもなお控除しきれない損失の金額については、その年分の翌年以後3年間にわたり、確定申告により、上場株式等に係る譲渡所得等の金額および上場株式等に係る配当所得等の金額から繰越控除することができます。[4]
訳すと、こうなります。税金のかかる口座で株式を売って損をしたら、同じ年の上場株式等の譲渡益や配当と相殺できます(配当は申告分離課税を選んだものに限ります)。相殺しきれない損失は、翌年以後3年間にわたって繰り越せます。この根拠は、租税特別措置法37条の12の2です[2]。
損失の扱いを並べると、こうなります。
| 損失が出た口座 | 損益通算 | 繰越控除 |
|---|---|---|
| NISA口座(ジュニアNISAを含む) | できない[3][4] | できない[3] |
| 特定口座・一般口座(上場株式等の譲渡損失) | できる(上場株式等の譲渡益・配当などと)[4][2] | できる(翌年以後3年間)[4][2] |
落とし穴① 確定申告をしても、NISAの損失は使えない
「損失が出たから、とにかく確定申告すればいいのでは?」と考える人がいます。しかし、No.1474には次の注記があります。
(注3) 非課税口座(NISA)及び未成年者口座(ジュニアNISA)内の上場株式等を譲渡したことにより生じた譲渡損失については、損益通算及び繰越控除はできません。[4]
確定申告は、税金のかかる口座の譲渡損失を活かすための手続です[4]。NISA口座の損失は申告書の計算に載る対象にならず、申告をしても戻ってくるものはありません。
落とし穴② 旧NISA・ジュニアNISAでも同じ
No.1535の説明には「(令和5年までのNISAおよびジュニアNISAにおいても同様です。)」とあります[3]。No.1474の注記も、ジュニアNISAを同じ扱いとしています[4]。つまり、非課税の期間や枠の名前が違っても、損失は「ないもの」として扱われます。旧NISA(一般NISA・つみたてNISA)で出した損失も使えません。
こうすればいい
| 状況 | 考えること |
|---|---|
| NISA口座で損失が出た | 税金の計算では使えません。利益が非課税であるぶんの裏の面です[3] |
| 特定口座・一般口座で損失が出た | 確定申告で上場株式等の譲渡損失の損益通算・繰越控除の特例を受けられます。申告書の付表と明細書の添付が必要です[4] |
| NISAと特定口座の両方で取引している | NISAは利益非課税・損失は使えない。特定口座は利益に課税・損失は通算や繰越ができる。この違いを、口座の使い分けの材料にします[3][4] |
| 迷ったら | 税務署の相談窓口で相談できます |
まとめ
「NISA口座の損益は特定口座や一般口座と通算できない」は、ホントです。損失をどちら向きに相殺したいかで分けて考えると、はっきりします。
- 特定口座・一般口座の損失は、NISAの利益と相殺できません。NISAの利益は非課税で、税金の計算に入らないからです[3]。
- NISAの損失は「ないものとみなされ」、特定口座や一般口座の利益との相殺も、翌年以降への繰り越しもできません[3][1]。
旧NISAやジュニアNISAも同じ扱いです。利益が非課税か、損失が使えるかの両面で口座を比べてください。
出典
- [1]租税特別措置法第37条の14(e-Gov法令検索) 確認日:2026-10-09
- [2]租税特別措置法第37条の12の2(e-Gov法令検索) 確認日:2026-10-09
- [3]国税庁 タックスアンサー No.1535「NISA制度」 確認日:2026-10-09
- [4]国税庁 タックスアンサー No.1474「上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除」 確認日:2026-10-09
※ 本文は2026年10月9日時点の法令・公式情報に基づきます。出典は法令(e-Gov)と国税庁の公式ページのみを使用しています。公開後に訂正が生じた場合は、訂正記録をこの記事の末尾に掲載します(訂正ポリシー)。