条件つきホント

「年金受給者は
確定申告しなくていい」は本当?

掲載日:2026年10月11日
分野:確定申告・申告手続

「年金だけで暮らしている人は、確定申告をしなくていい。年金からは税金も引かれているから、追加で払うものはないらしい」。退職して年金生活が始まった方や、そのご家族から、こんな話を耳にしたことはありませんか?

税金の言葉、先に4つだけ

この記事に出てくる言葉を、先にやさしく説明します。

  • 確定申告=1年間の所得と税金を計算して、税務署に報告する手続きです。
  • 公的年金等=国民年金・厚生年金など、公的な制度から受け取る年金です。
  • 雑所得=年金など、ほかの所得の区分に入らない所得です。年金はここに入ります。
  • 源泉徴収=年金を受け取るとき、あらかじめ税金を差し引いてもらうことです。

結論

  1. 「年金受給者は確定申告しなくていい」は、条件つきでホントです。原則として源泉徴収されている年金について、年金の収入が400万円以下で、年金以外の所得が20万円以下なら、確定申告は不要です。[1][2]
  2. ただし、年金は「非課税」ではありません。収入から公的年金等控除を差し引いた額が、雑所得として課税の対象になります。[2]
  3. 申告が不要な人でも、医療費控除などで税金が戻る還付申告はできます。住民税の申告は、別に必要な場合があります。[2]

判定は「条件つき」です。年金だけで生活していても、条件を超えると確定申告が必要になります。次から、根拠を順に見ていきます。

年金は「非課税」ではありません

年金には、税金がかかります。国税庁の説明では、公的年金等は次の形で課税の対象になります。

公的年金等は、年金の収入金額から公的年金等控除額を差し引いて所得金額を計算します。[2]

(国税庁タックスアンサー「No.1600 公的年金等の課税関係」)

訳すと、こうなります。年金の受け取り額そのものが課税の対象になるのではないことに注意してください。税金の計算のもとになるのは、収入から「公的年金等控除」を差し引いた額です。

さらに、年金を受け取るときには、原則として源泉徴収がされます。

公的年金等の支払を受けるときは、原則として収入金額からその年金に応じて定められている一定の控除額を差し引いた額に5.105パーセントを乗じた金額が源泉徴収されます。[2]

少し堅い文章なので訳すと、こうなります。年金を受け取るたびに、収入から一定の控除を差し引いた額に5.105%を掛けた税金を、先に差し引かれます。「年金から税金は引かれている」という部分は、このとおりです。

どれくらいの所得になるか。国税庁の数値例(65歳以上・年金以外の所得が500万円)では、年金の収入350万円に対する雑所得は次の計算になります。

3,500,000円×75%-275,000円=2,350,000円[2]

年金の収入350万円に対して、所得は235万円です。国税庁は、この所得から所得控除を差し引いた残りがある方については、確定申告で税額を精算するとしています。

公的年金等に係る雑所得の金額から所得控除を差し引くと残額がある方は、確定申告で税額を精算することとなります。[2]

(同上)

確定申告が不要になる条件

では、年金の所得に税金が残るのに、確定申告が不要になるのはどんなときか。所得税法121条3項が、公的年金等の受給者について、申告をしなくていい場合を定めています。

その年において第三十五条第三項(雑所得)に規定する公的年金等(以下この条において「公的年金等」という。)に係る雑所得を有する居住者で、その年中の公的年金等の収入金額が四百万円以下であるものが、その公的年金等の全部(第二百三条の七(源泉徴収を要しない公的年金等)の規定の適用を受けるものを除く。)について第二百三条の二(公的年金等に係る源泉徴収義務)の規定による所得税の徴収をされた又はされるべき場合において、その年分の公的年金等に係る雑所得以外の所得金額(利子所得の金額、配当所得の金額、不動産所得の金額、事業所得の金額、給与所得の金額、山林所得の金額、譲渡所得の金額、一時所得の金額及び公的年金等に係る雑所得以外の雑所得の金額の合計額をいう。)が二十万円以下であるときは、前条第一項の規定にかかわらず、その年分の課税総所得金額又は課税山林所得金額に係る所得税については、同項の規定による申告書を提出することを要しない。[1]

(所得税法第121条第3項)

少し堅い文章なので訳すと、こうなります。確定申告が不要になるのは、次の3つの条件を満たすときです。

  1. 年金の収入金額が400万円以下であること。
  2. 年金の全部について、源泉徴収がされている(されるべき)こと。
  3. 年金以外の所得金額が20万円以下であること。

国税庁も、同じ制度をわかりやすい形で説明しています。

平成23年分以後は、その年において公的年金等に係る雑所得を有する居住者で、その年中の公的年金等の収入金額が400万円以下であり、かつ、その年分の公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下である場合には確定申告の必要はありません。[2]

(国税庁タックスアンサー「No.1600 公的年金等の課税関係」・注2を除く本文)

「400万円」と「20万円」は、別のものを見ています

ここで、まちがいやすい点が一つあります。「400万円」は年金の収入金額、「20万円」は年金以外の所得金額です。この2つを取り違えると、判定を誤ります。

架空の2人で見てみます。

人物年金の収入金額年金以外の所得金額確定申告
Aさん380万円10万円不要
Bさん380万円30万円必要

2人とも、年金の収入は400万円以下です。分かれるのは、年金以外の所得が20万円以下かどうかです。年金以外に収入がある人ほど、収入の額ではなく所得の額で判定する点に注意してください。

落とし穴

穴は3つあります。

1つ目は、年金の支払額が小さいと、源泉徴収の扱いが変わることです。所得税法203条の7は、次のとおり定めています。

その年中に支払を受けるべき当該公的年金等の額がその年最初に当該公的年金等の支払を受けるべき日の前日の現況において政令で定める金額に満たないときは、当該公的年金等については、第二百三条の二(源泉徴収義務)の規定による所得税の徴収及び納付は、要しないものとする。[3]

(所得税法第203条の7)

この「政令で定める金額」は、118万円です。

法第二百三条の七(源泉徴収を要しない公的年金等)に規定する政令で定める金額は、百十八万円とする。[4]

(所得税法施行令第319条の12)

訳すと、こうなります。年に受け取る年金の額が118万円未満だと、受け取るときの源泉徴収はされません。源泉徴収されない年金が含まれる場合、申告不要制度の3つ目の条件(年金の全部について徴収されていること)の判定は、年金の組み合わせによって変わります。年金だけで所得が小さく収まる場合は、申告が不要になることもあります。判断に迷うときは、税務署の相談窓口で相談できます。

2つ目は、税金が戻る場合があることです。申告が不要な人でも、所得控除を使うための申告はできます。

この場合であっても、例えば、医療費控除や社会保険料控除など各種の所得控除の適用による所得税の還付を受けるための確定申告をすることができます。[2]

(国税庁タックスアンサー「No.1600 公的年金等の課税関係」・注1)

還付とは、払いすぎた税金が戻ることです。医療費が多かった年には、申告をすると税金が戻ることがあります。申告不要だからといって、申告をしてはいけないわけではありません。

3つ目は、住民税は別の話であることです。

公的年金等以外の所得金額が20万円以下で確定申告の必要がない場合であっても、住民税の申告が必要な場合があります。[2]

(国税庁タックスアンサー「No.1600 公的年金等の課税関係」・注2)

所得税の確定申告が不要でも、市区町村への住民税の申告は、別に必要になることがあります。

こうすればいい

状況考えること
年金だけ・収入400万円以下原則、確定申告は不要です。年金の源泉徴収票は取っておきます[2]
年金以外の所得があるその所得が20万円以下かを確認します。20万円を超えると、申告不要制度の対象から外れます[1][2]
医療費が多かった・源泉徴収されている医療費控除など、還付のための申告ができます。税金が戻ることがあります[2]
迷ったら申告が必要かどうかは、所得の組み合わせで分かれます。税務署の相談窓口で相談できます

まとめ

「年金受給者は確定申告しなくていい」は、条件つきです。

  • 年金の収入が400万円以下で、年金以外の所得が20万円以下なら、確定申告は不要です[1][2]。
  • 年金は非課税ではなく、収入から公的年金等控除を差し引いた額が雑所得です[2]。
  • 申告が不要でも、還付申告はできます。住民税の申告は別に必要な場合があります[2]。

年金の源泉徴収票を手元に置いて、まず400万円と20万円の2つの条件を確かめてみてください。


出典

※ 本文は2026年10月11日時点の法令・公式情報に基づきます。出典は、法令(e-Gov)・国税庁の公式資料を基本としています。公開後に訂正が生じた場合は、訂正記録をこの記事の末尾に掲載します(訂正ポリシー)。

本記事は掲載日時点の法令・公式情報に基づく一般的な解説です。個別の事案については、お近くの税務署または税理士にご相談ください。