ウソ

「海外FXは
分離課税だから得」は本当?

掲載日:2026年10月7日
分野:投資・相場取引

「海外FXは分離課税だから、利益が大きくても税金は少なくて済むらしい」。投資系の動画やSNSで、こんな話を耳にしたことはありませんか?

「FXは約20%の分離課税」という部分は、たしかに本当の話です。ただし、このルールが使えるのは、取引所での取引か、登録業者を相手方とする店頭取引に限られます。登録のない海外FX事業者を使うと、話は逆になります。利益が大きい人ほど、税金は高くなります。

この噂を、法令の原文と国税庁の公式情報まで遡って確かめました。

税金の言葉、先に4つだけ

この記事に出てくる言葉を、先にやさしく説明します。

  • FX(外国為替証拠金取引)=外国通貨を、担保に入れた証拠金の何十倍もの金額で売買する取引です。
  • 申告分離課税=その所得だけを他の所得から切り離して、一定の税率で税金を計算する方法です。
  • 総合課税=他の所得と合算して、金額が大きいほど税率が上がる計算方法です。給料も同じ枠で数えます。
  • 雑所得=給料や事業など、他の9種類の所得のどれにも当てはまらない所得のくくりです。副業の収入などが代表的です。

結論

  1. 「約20%の申告分離課税」が使えるFX取引は、金融商品取引法の定める取引のうち、取引所での取引(市場デリバティブ取引)か、相手方が「第一種金融商品取引業者」か「登録金融機関」である店頭取引に限られます。[2]
  2. 日本の登録を受けていない海外のFX事業者との取引は、申告分離課税の対象外です。利益は雑所得として総合課税になり、所得税の税率は5%から45%まで上がります。[4][1]
  3. 「分離課税だから得」は逆です。海外FX事業者経由だと、利益が大きいほど国内FXより税金が高くなります。[4]

判定は「ウソ」です。次から、根拠を順に見ていきます。

分離課税になれるFXの条件

まず、国内のFX事業者(証券会社やFX専門会社)経由の取引から確認します。国税庁のタックスアンサーNo.1521は、分離課税の対象になるFXを次のとおり説明しています。

金融商品取引法上の「市場デリバティブ取引」または「店頭デリバティブ取引(「第一種金融商品取引業者」または「登録金融機関」を相手方とする取引に限ります。以下同じです。)」に該当する外国為替証拠金取引(FX)の差金等決済(決済または行使もしくは放棄もしくは譲渡の総称です。)により生じた損益の課税関係は、次のとおりです。[2]

少し堅い文章なので訳すと、こうなります。分離課税の対象になるFXは、金融商品取引法の「市場デリバティブ取引」(取引所での取引)か「店頭デリバティブ取引」です。後者では、相手方が「第一種金融商品取引業者」または「登録金融機関」でなければなりません。国内で金融商品取引業の登録を受けて営業しているFX事業者が相手なら、この条件を満たします。

この場合の税率は、タックスアンサーNo.1522「先物取引に係る雑所得等の課税の特例」に書かれています。

その先物取引に係る事業所得、譲渡所得および雑所得(以下、これらを「先物取引に係る雑所得等の金額」といいます。)については、他の所得と区分して、所得税15パーセント(他に地方税5パーセント)の税率による申告分離課税となります。[3]

No.1521には、税額に上乗せされる税についての注記もあります。

平成25年から令和29年までの各年分の確定申告においては、所得税と復興特別所得税(原則として、その年分の基準所得税額の2.1パーセント)を併せて申告・納付することになります。[2]

なお、復興特別所得税の適用期間は「平成25年から令和19年(2037年)まで」と、国税庁の別のページ(確定申告書等作成コーナー)と復興財源確保法9条は示しています[4]。本文では同期間の取扱いに従って話を進めます。所得税15%に、所得税額を基準とする復興特別所得税2.1%(つまり課税所得×0.315%)と住民税5%を足すと、20.315%になります。これがいわゆる「FXは約20%」の正体です。ここまでは、噂のとおりです。

また、復興特別所得税の内訳には将来の変更が予定されています。国税庁によると「令和9年分以後は、復興特別所得税額が、基準所得税額の1.1パーセントとなり、防衛特別所得税を、基準所得税額の1パーセントの税率で、所得税および復興特別所得税と併せて申告・納付することになります」とのことです[3]。1.1%+1%=2.1%で、基準所得税額にかかる率の合計は2.1%のままです。この記事の税率計算は、その前提で変わるものではありません。

問題は、相手方がこの条件から外れる場合です。

海外FXは、申告分離課税の対象外

国税庁の確定申告書等作成コーナー「外国為替証拠金取引(FX)の課税関係」には、次の注記があります。

平成28年10月1日以後に行う店頭デリバティブ取引のうち、金融商品取引業者(第一種金融商品取引業を行う者に限ります。)又は登録金融機関以外との取引は、申告分離課税ではなく、(注1)の取扱いとなります[4]

「(注1)の取扱い」とは何か。No.1521は、該当しない取引で差益が生じた場合を次のとおり説明しています。

一般的には、雑所得として総合課税の対象となりますので、課税総所得金額に応じた税率(超過累進税率)で課税されます。[2]

かみ砕くと、こういうことです。日本の金融商品取引業の登録を受けていない海外のFX事業者との取引は、「先物取引に係る雑所得等」の特例から外れます。その利益は雑所得(総合課税)になり、給料などの他の所得と合算して、金額が大きいほど税率が上がる仕組みで計算されます。店頭取引でも、金融商品取引法の「店頭デリバティブ取引」に該当しないものは、同じ扱いになります[4]。

ここが噂の誤りのもとです。「FXは分離課税」という言葉だけが一人歩きして、「誰との取引か」という条件が抜け落ちています。

税率は最大約55%まで上がる

総合課税の所得税の税率は、所得税法89条の税率表で定められています。最高税率は、課税総所得金額4,000万円超の部分にだけかかります。

四千万円を超える金額百分の四十五[1]

(抜粋)

税率表を所得額の低い順に並べると、所得税の部分は次の7区分になります[1]。

課税総所得金額所得税率
195万円以下の部分5%
195万円超330万円以下の部分10%
330万円超695万円以下の部分20%
695万円超900万円以下の部分23%
900万円超1,800万円以下の部分33%
1,800万円超4,000万円以下の部分40%
4,000万円超の部分45%

住民税の所得割は、杉並区の例では特別区民税6%、都民税4%で、合わせて10%です[5]。復興特別所得税2.1%も所得税の基準税額に対してかかります[2]。所得税45%・住民税10%・復興特別所得税0.945%(45%×2.1%)を合わせると、海外FXの利益への税率は最大約55.945%です。まとめでは約55%と表記します。

具体例で比べてみましょう。所得控除を考えない概算で、1年のFX利益が3,000万円の場合です。

人取引と利益税金(概算)
Aさん国内FXで3,000万円約609万円(20.315%)
Bさん海外FXで3,000万円約1,240万円(約41%)

同じ3,000万円の利益でも、税金の差は約630万円です。Bさんの税額の内訳は、所得税約920万円、復興特別所得税約19万円、住民税300万円です。手取りはAさんが約2,390万円、Bさんが約1,760万円になります。なお、Bさんの「約41%」は3,000万円全体に係る平均税率で、最高税率55%(4,000万円超の部分にだけかかる)とは別の数字です。

なお、他の所得がまったくなく、利益が小さい場合に限れば(所得控除を考えない概算)、総合課税の方が税額が下がることもあります。利益100万円・他の所得なしの場合、総合課税では所得税5万円、住民税10万円など計約15万円で、分離課税の約20万円より安くなります。しかし会社員など、もともと所得がある人は、FXの利益が給料に上乗せされて、高い税率の区分に達します。

落とし穴① 損をした年に、使える手段が限られる

国内FXには、損失が出た年の強い味方になる制度があります。他の「先物取引に係る雑所得等」と損益通算をしてもなお引ききれない損失は、3年間繰り越せる制度です[2][3]。

国税庁No.1523は、その繰越控除を次のとおり説明しています[6]。

「先物取引に係る雑所得等」の金額の計算上生じた損失がある場合に、その損失の金額を翌年以後3年間にわたり繰り越し、その繰り越された年分の「先物取引に係る雑所得等」の金額を限度として、一定の方法により、「先物取引に係る雑所得等」の金額の計算上その損失の金額を差し引くことです。

海外FXの損失には、この制度が使えません。No.1521は、該当しない取引で差損が生じた場合を次のとおり説明しています。

上記イのとおり、一般的には雑所得とされることから、雑所得の範囲内での損益の通算は可能ですが、他の各種所得の金額との損益通算はできません。なお、申告分離課税の対象となる「先物取引に係る雑所得等」の金額との損益の通算もできません。[2]

つまり、海外FXの損失は、同じ「雑所得」の範囲内でのみ損益通算ができます。給与などの他の所得から引くことも、国内FXの利益と相殺することも、翌年以降に繰り越すこともできません。他の所得との損益通算と損失の繰越控除は使えません。

落とし穴② 給料と合算されて、さらに高くなる

総合課税では、海外FXの利益は給料など他の所得と合算されます。合算されると、その分が高い税率の区分に積み上がります。

例を挙げます。給与所得400万円の会社員が、海外FXで500万円の利益を得た場合です(所得控除を考えない概算)。課税総所得金額は900万円になります。この500万円の増え分にかかる税金は、所得税・復興特別所得税・住民税を合わせて約158万円です。同じ500万円の利益が国内FXなら、約102万円(20.315%)で済みます。

差は約57万円です。利益が大きくなるほど、この差は開いていきます。3,000万円の例では、差は約630万円でした。

こうすればいい

まず、取引の相手方がどちらに当たるかを確認します。

相手方課税区分確定申告での扱い
国内の登録を受けたFX事業者先物取引に係る雑所得等(申告分離課税・20.315%)[2]「先物取引に係る雑所得等」として申告し、計算明細書を添付する[3]
登録のない海外FX事業者雑所得(総合課税・最大約55%)[4]他の所得と合算して、雑所得として申告する[2]
  • 海外FXで損をした場合:他の所得との損益通算と損失の繰越控除は使えません。雑所得の範囲内での通算のみです[2][6]。
  • 国内FXで損をした場合:他の「先物取引に係る雑所得等」と損益通算をしてもなお引ききれない損失は、一定の要件の下で3年間繰り越せます[2][3]。
  • すでに海外FXで取引している場合:利益は雑所得(総合課税)として、他の所得と合算して申告します。年間の取引記録は、雑所得内での損益通算の根拠になるので残しておきます。
  • 迷ったら:税務署の相談窓口で、「自分の取引が申告分離課税の対象か」を相談できます。

まとめ

「海外FXは分離課税だから得」は、ウソです。分離課税(20.315%)が使えるのは、取引所での取引(市場デリバティブ取引)か、登録業者を相手方とする店頭取引です。登録のない海外FX事業者との取引は雑所得(総合課税)になり、所得税は最大45%、住民税と合わせて最大約55%です。損失の繰越控除も使えません[6]。

「FXは分離課税」は、取引所か登録業者が相手であることが前提の言葉です。相手が登録のない海外FX事業者だと、途端に間違いになります。税率の数字だけを覚えるのではなく、「誰との取引か」「どの課税区分か」まで確認する癖をつけてください。


出典

※ 本文は2026年10月7日時点の法令・公式情報に基づきます。出典は法令(e-Gov)と国税庁・自治体の公式ページのみを使用しています。公開後に訂正が生じた場合は、訂正記録をこの記事の末尾に掲載します(訂正ポリシー)。

本記事は掲載日時点の法令・公式情報に基づく一般的な解説です。個別の事案については、お近くの税務署または税理士にご相談ください。