「法人成りすると消費税が2年免除」は本当?
「個人事業をたたんで会社をつくれば、消費税は2年間免除になる。事業が小さなうちは払わなくていい、らしい」。法人成り(個人事業をやめて、同じ事業をする会社をつくること)を考えている方から、こんな話を耳にしたことはありませんか?
税金の言葉、先に4つだけ
この記事に出てくる言葉を、先にやさしく説明します。
- 法人成り=個人事業をやめて、同じ事業をする会社をつくることです。
- 消費税=物やサービスを売ったとき、受け取るお金に上乗せして預かる税金です。
- 基準期間=消費税の納税義務があるかを判定するときに見る「前々年・前々事業年度」の期間です。
- 課税事業者=消費税の申告と納税をしなければならない事業者です。
結論
判定は「条件つき」です。「2年間免除」の中身は、設立した直後に限って働く特別な免除ではなく、基準期間という判定用の期間がまだ無いことによるものです。次から、順に見ていきます。
なぜ「2年間」免除になるのか
消費税の納税義務は、基準期間(判定のもとになる前々年・前々事業年度)の売上で判定します。消費税法9条1項は、次のとおり定めています。
事業者のうち、その課税期間に係る基準期間における課税売上高が千万円以下である者(適格請求書発行事業者を除く。)については、第五条第一項の規定にかかわらず、その課税期間中に国内において行つた課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れにつき、消費税を納める義務を免除する。ただし、この法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。[1]
(消費税法第9条第1項)
少し堅い文章なので訳すと、こうなります。基準期間の課税売上高が1,000万円以下なら、消費税を納める義務は免除されます。
基準期間がどの期間を指すかは、消費税法2条1項14号に定めがあります。
個人事業者についてはその年の前々年をいい、法人についてはその事業年度の前々事業年度(当該前々事業年度が一年未満である法人については、その事業年度開始の日の二年前の日の前日から同日以後一年を経過する日までの間に開始した各事業年度を合わせた期間)をいう。[3]
(消費税法第2条第1項第14号)
訳すと、こうなります。法人の基準期間は「前々事業年度」です。新しく設立した会社には、まだ前々事業年度が存在しません。
では、基準期間がない会社の扱いはどうなるか。国税庁は、次のとおり説明しています。
新たに開業した個人事業者または新たに設立された法人のように、その課税期間について基準期間における課税売上高がないときまたは基準期間がないときは、原則として納税義務が免除されますが、例えば、次の「納税義務が免除されない場合」のようなときには免除されませんのでご注意ください。[6]
(国税庁タックスアンサー「No.6531 新規開業又は法人の新規設立のとき」)
「2年間」の数え方
「2年間」の中身は、設立1期目と2期目、つまり最初の2つの事業年度です。国税庁の説明では、次のとおりです。
新たに設立された法人の設立1期目および2期目については、基準期間がありませんので、設立1期目および2期目は原則として納税義務が免除されますが、以下に記載する「新設法人に対する納税義務の免除の特例」または「特定新規設立法人の納税義務の免除の特例」に該当する場合には、納税義務は免除されず、課税事業者として消費税の申告が必要となります。[4]
(国税庁タックスアンサー「No.6503 基準期間がない法人の納税義務の免除の特例」)
引用の中の「特定新規設立法人」は、親会社などの大きな会社グループが設立した会社に働く別の特例です。この記事では扱いません。
事業年度は暦の1年と一致しないことがあります。設立1期目は設立の日から最初の決算日までなので、短くなります。決算月と設立日の組み合わせによって、「2年間」より短いこともあります。
なお、3期目になった瞬間に必ず払うようになるわけでもありません。基準期間(前々事業年度)ができても、その課税売上高が1,000万円以下なら、免除は続きます。
その課税期間の基準期間(個人事業者の場合はその年の前々年、事業年度が1年である法人の場合はその事業年度の前々事業年度)における課税売上高が1,000万円以下である場合には、原則として、納税義務が免除されます。[5]
(国税庁タックスアンサー「No.6501 納税義務の免除」)
「事業が小さなうちは払わなくていい」という部分は、この点ではあたっています。
資本金1,000万円で答えが分かれる
次が本題です。基準期間がなくても、免除されない場合があります。消費税法12条の2は、新設法人の特例として次のとおり定めています。
当該事業年度開始の日における資本金の額又は出資の金額が千万円以上である法人(以下この項及び次項において「新設法人」という。)については、当該新設法人の基準期間がない事業年度に含まれる各課税期間(第九条第四項の規定による届出書の提出により、又は第九条の二第一項、第十一条第三項若しくは第四項若しくは前条第一項若しくは第二項の規定により消費税を納める義務が免除されないこととなる課税期間を除く。)における課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れについては、第九条第一項本文の規定は、適用しない。[2]
(消費税法第12条の2第1項・抜粋)
少し堅い文章なので訳すと、こうなります。事業年度の始めの資本金の額が1,000万円以上ある会社は、基準期間がなくても9条1項の免除を受けられません。つまり、1期目から課税事業者です。
国税庁も、同じ点を説明しています。
その事業年度開始の日における資本金の額または出資の金額が1,000万円以上である法人(以下「新設法人」といいます。)は、その課税期間の納税義務は免除されません。したがって、設立1期目または設立2期目のそれぞれの期首における資本金の額または出資の金額が1,000万円以上である場合には、その設立1期目または設立2期目は課税事業者となります。[4]
(国税庁タックスアンサー「No.6503 基準期間がない法人の納税義務の免除の特例」)
判定の引き金になるのは、それぞれの期首の資本金の額です。架空の2つの会社で、1期目の答えを比べてみます。
| 会社 | 1期目の期首の資本金の額 | 1期目の納税義務 | 2期目の納税義務 |
|---|---|---|---|
| Aさん会社 | 500万円 | 原則、免除 | 原則、免除 |
| Bさん会社 | 1,200万円 | 免除されない | 免除されない |
なお、Bさん会社は、2期目の期首にも資本金1,200万円のままであるという前提の例です。
2つの会社の違いは資本金の額だけです。Aさん会社でも、3期目以降に基準期間の課税売上高が1,000万円を超えれば免除は外れます。ただ、「設立したばかりだから免除」という仕組みが動くかどうかは、資本金の額で分かれます。
落とし穴
問題は、その先です。免除を思い込んでいると、次の3つでつまずきます。
1つ目は、インボイス(適格請求書発行事業者)の登録です。登録を受けた事業者は、売上が小さくても免除されません。
適格請求書発行事業者は、基準期間における課税売上高や基準期間がない法人の納税義務の免除の特例の適用の有無にかかわらず、納税義務は免除されません。[4]
(国税庁タックスアンサー「No.6503 基準期間がない法人の納税義務の免除の特例」・注)
取引先からインボイスを求められて登録すると、設立1期目から申告と納税が必要になります。
2つ目は、設立1期目の途中での増資です。国税庁は、次の例を挙げています。
例えば、資本金の額を1,000万円未満で設立した後、設立1期目の途中で増資したことにより資本金の額が1,000万円以上となった場合には、設立2期目は課税事業者となります。[4]
(国税庁タックスアンサー「No.6503 基準期間がない法人の納税義務の免除の特例」)
判定に使うのは、それぞれの期首の資本金の額です。1期目の途中で1,000万円以上になったら、2期目から免除されません。
3つ目は、特定期間(前の事業年度の始まりから6か月)の売上です。
設立2期目を判定する場合において、設立1期目に特定期間が生じている場合には、特定期間の課税売上高等による納税義務の判定も必要となります。[4]
(国税庁タックスアンサー「No.6503 基準期間がない法人の納税義務の免除の特例」・注)
訳すと、こうなります。2期目を判定するときは、1期目の中の特定期間の売上も見ます。設立してすぐ売上が立った会社は、2期目で免除が外れることがあります。ただし、1期目の事業年度が7か月以下の会社などには、特定期間が生じません[7]。
特定期間の売上が1,000万円を超えても、免除がすぐ外れるわけではありません。売上の代わりに、同じ期間に支払った給与等の合計額で判定してよいと、法律で定められています。
当該事業者が第一項の特定期間中に支払つた所得税法第二百三十一条第一項(給与等、退職手当等又は公的年金等の支払明細書)に規定する支払明細書に記載すべき同項の給与等の金額に相当するものとして財務省令で定めるものの合計額をもつて、第一項の特定期間における課税売上高とすることができる。[7]
(消費税法第9条の2第3項・抜粋)
訳すと、こうなります。特定期間の売上が1,000万円を超えても、その期間に支払った給与等が1,000万円以下なら、給与等の額で判定して、免除を受けられます。法人成りの直後は、役員報酬だけの会社も多いため、この判定方法が効いてくることがあります。
こうすればいい
| 状況 | 考えること |
|---|---|
| 資本金1,000万円未満で設立、インボイス登録はしない | 1期目と2期目は原則、納税義務は免除です[4] |
| 資本金1,000万円以上で設立する | 1期目から課税事業者です。申告の準備をします[2][4] |
| 取引先からインボイスを求められている | 登録すると免除されません。「2年免除」の前提が変わります[4] |
| 1期目の途中で増資する予定がある | 期首の資本金の額が1,000万円以上になると、2期目から免除されません[4] |
| 資本金の額やインボイス登録で迷ったら | 設立前に税理士に相談します。制度の仕組みは税務署の相談窓口でも確認できます |
まとめ
「法人成りすると消費税が2年免除」は、条件つきです。
- 設立1期目と2期目は基準期間がなく、原則として納税義務は免除です[1][4]。
- 資本金1,000万円以上の会社は、1期目から課税事業者です[2][4]。
- インボイス登録をした場合や、特定期間の売上と給与等がどちらも1,000万円を超えた場合も、免除は外れます[4]。
- 3期目以降も、基準期間の課税売上高が1,000万円以下なら免除は続きます[5]。
「2年免除」を当てにして資本金やインボイス登録を決めると、1期目から申告が必要になることがあります。設立の前に、資本金の額とインボイス登録の要否を確かめてみてください。
出典
- [1]消費税法第9条第1項(e-Gov法令検索) 確認日:2026-10-13
- [2]消費税法第12条の2第1項(e-Gov法令検索) 確認日:2026-10-13
- [3]消費税法第2条第1項第14号(e-Gov法令検索) 確認日:2026-10-13
- [4]No.6503 基準期間がない法人の納税義務の免除の特例 — 国税庁タックスアンサー 確認日:2026-10-13
- [5]No.6501 納税義務の免除 — 国税庁タックスアンサー 確認日:2026-10-13
- [6]No.6531 新規開業又は法人の新規設立のとき — 国税庁タックスアンサー 確認日:2026-10-13
- [7]消費税法第9条の2(e-Gov法令検索) 確認日:2026-10-13
※ 本文は2026年10月13日時点の法令・公式情報に基づきます。出典は、法令(e-Gov)・国税庁の公式資料を基本としています。公開後に訂正が生じた場合は、訂正記録をこの記事の末尾に掲載します(訂正ポリシー)。