ウソ

「法人カードで払えば
全部経費」は本当?

掲載日:2026年10月5日
分野:経費・必要経費

「法人カードで払えば、なんでも経費になる」。中小企業の経営者やフリーランスの間で、こんな噂を耳にしたことはありませんか。

「家族との食事代も、接待交際費として落とせるらしい」。こんな話もセットで広がっています。でも、この噂は間違いです。

この噂を、法人税法などの法律の原文と国税庁の公式情報まで遡って確かめました。

税金の言葉、先に4つだけ

  • 経費=事業のために使ったお金で、所得(儲け)から差し引けるもの。法人税では「損金」といいます。
  • 法人カード=会社名義のクレジットカード。支払いは会社の口座から引き落とされます。
  • 役員給与=社長などの役員がもらう報酬。経費にするには、毎月同額を支払う(定期同額給与)などの条件があります。
  • 源泉徴収=お金を払う側が、受け取る人の所得税を先に天引きして国に納める仕組みです。

結論

  1. 法人カードは支払い手段にすぎません。経費になるかは、その支出が事業のためのものかどうかで決まります。[1][3]
  2. 家族の食事や私物などの私的支出は、損金(経費)に算入できません。役員が私的に使った場合、そのままにしておくと、その分が給与として扱われます。損金不算入に加えて、源泉徴収の問題も起きます。[2][7][8]
  3. 個人事業主も同じです。家事上の費用は必要経費にならず、領収書などの証憑の保存も義務です。[4][11][12]

判定は「ウソ」。現金で払っても、銀行振込で払っても、カードで払っても、結論は同じです。お金の性質は、何に使ったかで決まります。

カード払いは「支払い方法」にすぎない

まず基本の仕組みから。法人税は、収益(収入)から損金(経費)を引いて会社の所得を計算します。法人税法22条1項(e-Gov法令検索)は、こう書いています。

内国法人の各事業年度の所得の金額は、当該事業年度の益金の額から当該事業年度の損金の額を控除した金額とする。[1]

(22条1項)

22条3項は、損金に入るものを3つ挙げています。1号が売上原価、2号が販売費・一般管理費などの費用、3号が損失です。このうち2号の費用について定めた部分がこちらです。

前号に掲げるもののほか、当該事業年度の販売費、一般管理費その他の費用(償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除く。)の額[1]

(22条3項2号・抜粋)

カッコ書きは「償却費以外の費用のうち、債務の確定していないものは除く」という技術的なルールです。

要点は、損金の対象が「当該事業年度の販売費、一般管理費その他の費用」だということです。販売費や一般管理費は、事業を進めるためにかかる費用と考えられています。つまり損金になるかは、何に使ったお金かで決まります。

22条には、支払い方法に当たる言葉は出てきません。カードの利用明細に載るのは日付・利用先・金額で、何のための支出かまでは分かりません。

個人事業主のルールも同じ構造です。事業所得などの必要経費について、所得税法37条1項(e-Gov法令検索)はこう書いています。

別段の定めがあるものを除き、これらの所得の総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るため直接に要した費用の額及びその年における販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用(償却費以外の費用でその年において債務の確定しないものを除く。)の額とする。[3]

(37条1項・抜粋)

必要経費になるのは、①売上原価など収入を得るために直接かかった費用と、②販売費・一般管理費など業務のためにかかった費用です。②は直接でなくてもかまいません。ここで、架空の2人を比べてみましょう。どちらも法人カードで支払った社長です。

人法人カードで払ったもの税務上の判定
Aさん得意先との食事代(3人で3万円)交際費。損金算入には限度額あり
Bさん自分の子どものゲーム機5万円私的支出。損金に算入できない

同じ法人カード、同じ「買い物の支払い」です。判定を分けるのは、事業のためかどうかだけです。

Aさんの接待は事業のための支出なので、交際費として経費の対象になります。ただし交際費には損金算入の限度額があり、資本金などによって扱いが分かれます(資本金1億円以下の法人には、次の特例があります)。国税庁のタックスアンサーNo.5265は、こう書いています。

交際費等の額は、原則として、その全額が損金不算入とされていますが、損金不算入額の計算に当たっては、下記の法人の区分に応じ、一定の措置が設けられています。[10]

資本金1億円以下の中小企業などは、事業年度ごとに、年800万円(月数で按分)までを損金にする方法と、得意先接待の飲食費などの50パーセントを損金にする方法のどちらかを選べます[10]。どちらも時限つきの特別措置で、令和9年3月31日までに開始する事業年度が対象です(租税特別措置法61条の4)[15]。適用年度の最新状況は、国税庁のページで確かめてください。

一方、Bさんのゲーム機は子どものための買い物です。会社の事業とは無関係なので、どのカードで払っても経費にはなりません。しかもBさんが社長、つまり役員の場合、問題はもっと大きくなります。次の章で見ていきましょう。

落とし穴① 役員が使えば「賞与」になる

会社が役員の私的な支出を負担すると、税法は、会社が役員に利益を与えたと見ます。国税庁のタックスアンサーNo.5202では、役員に支給する給与の範囲を次のように説明しています。

法人が役員および特殊関係使用人(以下「役員等」といいます。)に支給する給与には、金銭によるもののほか、債務の免除による利益その他の経済的な利益も含まれます。[8]

言い換えると、現金を受け取らなくても、会社に個人の費用を払ってもらえば、給与をもらったのと同じに扱う、という意味です。同じページは、経済的な利益の例を番号つきで挙げています。10番目がまさにこれです。

10 役員等の個人的費用の負担額[8]

子どものゲーム機を法人カードで買えば、その5万円は、会社が社長に支払った「給与(経済的な利益)」と同じ扱いになります。法人税法34条4項(e-Gov法令検索)も、同じことを定めています。

前三項に規定する給与には、債務の免除による利益その他の経済的な利益を含むものとする。[2]

(34条4項)

税務調査までそのままにしておくと、給与として扱われます。気づいた時点で本人が会社に返金し、修正申告または前期損益修正で処理しておけば、調査で指摘されることは通常ありません(税理士の実務上の扱い)。

この給与(経済的な利益)には、3つの不利益があります。

  1. 会社の損金になりません。1回限りの私的支出は、毎月同額を支払う給与(定期同額給与)などの要件に当てはまらないからです。
  2. 源泉徴収が必要になります。この給与は給与所得なので、会社が所得税を天引きして納めなければなりません。「経費のつもり」で天引きしないと、税務署長からその所得税を徴収されます(所得税法221条1項)[14]。
  3. 役員本人の所得税と住民税も増えます。会社から給与(役員給与)をもらったのと同じ扱いになるためです。

34条4項は経済的な利益も給与に含めます。給与のうち損金になるものは、1項が決めています。法人税法34条1項(e-Gov法令検索)は、こう書いています。

内国法人がその役員に対して支給する給与(退職給与で業績連動給与に該当しないもの、使用人としての職務を有する役員に対して支給する当該職務に対するもの及び第三項の規定の適用があるものを除く。以下この項において同じ。)のうち次に掲げる給与のいずれにも該当しないものの額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。[2]

(34条1項)

言い換えると、役員への給与のうち、定期同額給与・事前確定届出給与・業績連動給与のいずれにも当てはまらないものは、会社の経費にできません、という規定です。国税庁のタックスアンサーNo.5211も、同じルールをこう説明しています。

法人が役員に対して支給する給与(注)の額のうち次に掲げる定期同額給与、事前確定届出給与または一定の業績連動給与のいずれにも該当しないものの額は損金の額に算入されません。[7]

引用の(注)は、退職給与、使用人兼務役員の使用人としての職務に対するもの、事実を隠蔽・仮装して経理したものを除く、という意味です。

源泉徴収の根拠は所得税法です。所得税でも、経済的な利益は収入になります(所得税法36条1項)[13]。賞与が給与所得にあたることは、所得税法28条1項(e-Gov法令検索)に書かれています。

給与所得とは、俸給、給料、賃金、歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与(以下この条において「給与等」という。)に係る所得をいう。[5]

(28条1項)

そして会社には、給与を払うときに所得税を徴収して国に納める義務があります。所得税法183条1項(e-Gov法令検索)は、こう書いています。

居住者に対し国内において第二十八条第一項(給与所得)に規定する給与等(以下この章において「給与等」という。)の支払をする者は、その支払の際、その給与等について所得税を徴収し、その徴収の日の属する月の翌月十日までに、これを国に納付しなければならない。[6]

(183条1項)

役員が私物を法人カードで買うと、会社は経費にできず法人税が増えます。役員個人は給与として課税されます。

なお、役員でなくても、使用人が私的に使えばその分は給与として扱われ、源泉徴収が必要になります[13][5][6]。

落とし穴② 個人事業主も同じ

同じ誤解は、個人事業主にもあります。事業用のクレジットカードで私物を買うケースです。ここでもカードは支払い手段にすぎません。所得税法45条1項1号(e-Gov法令検索)は、こう書いています。

居住者が支出し又は納付する次に掲げるものの額は、その者の不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の金額又は雑所得の金額の計算上、必要経費に算入しない。

一 家事上の経費及びこれに関連する経費で政令で定めるもの[4]

(45条1項1号・抜粋)

家事上の経費とは、家族の食事代や、仕事に使っていない自宅の家賃など、生活のためのお金です。事業用のカードで払っても、必要経費にはなりません。国税庁のタックスアンサーNo.2210は、仕事と生活が混ざる費用の扱いをこう説明しています。

この家事関連費のうち必要経費になるのは、取引の記録などに基づいて、業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる場合のその区分できる金額に限られます。[9]

店舗併用住宅の家賃や水道光熱費のように、仕事と生活の両方にかかる費用は家事関連費と呼ばれます。このうち経費になるのは、業務に直接必要だと明らかに区分できる部分だけです。用途の区分で決まるのであって、誰名義のカードで払ったかでは決まりません。

落とし穴③ 領収書などの保存も義務

経費の計上と、証憑(領収書などの証拠書類)の保存はセットです。法人には帳簿と書類の保存義務があります。国税庁のタックスアンサーNo.5930。

法人は、帳簿(注1)を備え付けてその取引を記録するとともに、その帳簿と取引等に関して作成または受領した書類(注2)を、その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間(注3)保存しなければなりません。[11]

引用の(注1)は帳簿、(注2)は取引等に関する書類、(注3)は保存期間の特例で、いずれも原文の注記です。(注3)の特例として、青色申告で欠損金(青色繰越欠損金)が生じた事業年度などは、保存期間が10年になります[11]。

保存すべき書類には、領収書も含まれます[11]。カード明細だけでは、何を買って誰のために使ったのかまでは分かりません。領収書などの証憑を保存し、接待なら相手先や目的を記録しておきましょう[10]。

個人事業主にも保存義務があります。白色申告者の場合は、国税庁のタックスアンサーNo.2080が次のように説明しています。

白色申告者に対しても、記帳制度や記録保存制度が設けられています。[12]

不動産・事業・山林所得のある方は、収入金額や必要経費を記載した帳簿を7年、請求書や領収書などの書類を5年保存する必要があります[12]。

こうすればいい

カード払いで問題を起こさないために、日頃から心がけたい5つのことをまとめます。

やること具体的には
業務用と私用のカードを分ける私的支出は法人カードで払わない。個人用のカードを用意して使い分けます[1][3]
うっかり私用に払ったら正しく処理する役員分は給与として源泉徴収するか、気づいたら本人が会社に返金し、修正申告または前期損益修正をします[2][6]
カード明細と領収書をそろえて保存する領収書を保存し、接待費は相手先や目的を記録しておきます[10][11]
役員給与は「定期同額」にする毎月同額を支払います。期の途中で、利益が出たからといって臨時的に増やすと、その増えた分は損金になりません[7]
混ざる支出は業務部分を区分する家賃や通信費は、業務に使ったと明らかに区分できる部分だけを計上します(個人事業主)[9]

区分の仕方に迷ったら、早めに税理士や税務署の窓口へ相談してください。「この支出は事業のために使った」と記録で説明できるようにしておけば、多くのトラブルは防げます。

まとめ

経費になるかどうかは、その支出が事業のためのものかどうかで決まります。私的支出は損金に算入できず、役員が使えばその分は給与として扱われ、損金不算入と源泉徴収の問題も加わります。個人事業主でも、家事上の経費は必要経費になりません。そして領収書などの証憑の保存は、法人にも個人にも義務づけられています。

カードは便利な道具です。便利なので、何に使ったかを意識しにくくなります。支払い方法を考える前に、「これは事業のためのお金か」を確かめてください。噂は ウソ でした。


出典

※ 本文は、国税庁の各ページ(令和7年4月1日現在または令和8年4月1日現在の法令等と表示)と、2026年10月4日・5日に確認した法令に基づきます。出典は法令(e-Gov)と国税庁の公式ページのみを使用しています。公開後に訂正が生じた場合は、訂正記録をこの記事の末尾に掲載します(訂正ポリシー)。

本記事は掲載日時点の法令・公式情報に基づく一般的な解説です。個別の事案については、お近くの税務署または税理士にご相談ください。