条件つきホント

「副業の収入が20万円以下なら
確定申告しなくていい」は本当?

掲載日:2026年10月4日
分野:副業・副収入

「副業は20万円以下なら申告しなくていい」。YouTubeやSNSで、こんな話を耳にしたことはありませんか?

「20万円」という数字は、たしかに所得税のルールに出てきます。でも、この噂をそのまま信じて何もしないと、あとから住民税の請求が来るおそれがあります。

この噂を、法令の原文と国税庁の公式情報まで遡って確かめました。

税金の言葉、先に4つだけ

この記事に出てくる言葉を、先にやさしく説明します。

  • 確定申告=1年間の所得と税金を自分で計算して、税務署に書類を提出する手続きです。期間は毎年2月16日から3月15日までです。
  • 住民税=お住まいの都道府県と市区町村に払う税金です。会社勤めの人は、ふつう給料から天引きされています。
  • 年末調整=会社が年末に、あなたの所得税を精算してくれる手続きです。会社員ならほぼ全員が対象です。
  • 申告不要≠非課税=「申告しなくていい」は「税金がかからない」という意味ではありません。

結論

  1. 「20万円以下なら所得税の確定申告は不要」は、法律に書かれた本当のルールです。ただし、給料を1か所からもらって年末調整が済んでいること、20万円と比べるのが所得(儲け)であること、の2つが条件です。[1][4]
  2. 住民税にこの特例はありません。副業の儲けが1円でもあれば、市区町村への住民税の申告が必要です。住民税もかかります。[2][8]
  3. 所得税と住民税は別々の手続きです。「何もしなくていい」に広げると間違いになります。[2]

判定は「条件つきホント」。所得税の話に限れば正しく、条件を外すと危うくなります。

「収入」と「所得」の違い

20万円と比べるのは、収入ではなく所得です。判定を間違えると、申告漏れになります。

  • 収入=受け取ったお金の合計額
  • 必要経費=その収入を得るためにかかった費用。例:仕入れ代、通信費、交通費
  • 所得=収入から必要経費を引いた額。いわゆる儲け

具体例で見てみましょう。

人収入−経費=所得所得税の確定申告
Aさん:仕入れた商品をフリマで売った25万−10万=15万円不要(所得が20万円以下)
Bさん:デザインを受注した30万−5万=25万円必要(所得が20万円超)

Aさんの収入は25万円で、20万円を超えています。でも所得で比べると15万円なので、確定申告は不要です。Bさんは経費を引いても所得が25万円あるので、申告が必要です。

なお、自分の服や家具など、生活の用に供する資産を売ったお金は、そもそも所得税の対象外です(所得税法9条1項9号)[11]。数えるのは、Aさんのように仕入れた商品を売った場合です。

ポイントは、20万円と比べるのが「所得(儲け)」だという点です。給与1か所で年末調整済みの場合の話です。

※ ただしAさんのような人でも、医療費控除などで確定申告をする場合は注意が必要です。20万円以下の副業の所得も、まとめて申告しなければなりません。還付申告をするときは、20万円以下の所得も全部申告に含めます[4]。

副業がパート・アルバイトの場合

副業がパートやアルバイトのように給料をもらう形の場合は、必要経費を引くことができません。副業の給料は収入金額のまま数えて、他の副業の儲けと合計して判定します。この数え方は法律の原文に書かれています。所得税法121条1項2号イです(e-Gov法令検索)。

第百九十五条第一項(従たる給与についての扶養控除等申告書)に規定する従たる給与等の支払者から支払を受けるその年分の給与所得に係る給与等の金額とその年分の給与所得及び退職所得以外の所得金額との合計額が二十万円以下であるとき。[1]

「従たる給与」とは、年末調整を受けない給与、つまり副業先の給料のことです。2か所以上から給料をもらう人は、副業先の給料の「収入金額」と他の所得の合計が20万円以下なら、確定申告をしなくてよい、という規定です。

国税庁のタックスアンサーNo.1900では、同じルールを次のように説明しています。

給与を2か所以上から受けていて、かつ、給与の全部が源泉徴収の対象となる場合において、年末調整されなかった給与の収入金額と、各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く。)との合計額が20万円を超える人[4]

たとえばパート収入12万円とフリマの儲け10万円があれば、合計22万円で申告が必要です。「それぞれ20万円以下だから大丈夫」ということにはなりません。

「20万円ルール」の根拠

給料が1か所だけの場合のルールも、法律の原文を見てみましょう。所得税法121条1項1号です(e-Gov法令検索)。

一の給与等の支払者から給与等の支払を受け、かつ、当該給与等の全部について第百八十三条(給与所得に係る源泉徴収義務)又は第百九十条(年末調整)の規定による所得税の徴収をされた又はされるべき場合において、その年分の利子所得の金額、配当所得の金額、不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の金額、譲渡所得の金額、一時所得の金額及び雑所得の金額の合計額(以下この項において「給与所得及び退職所得以外の所得金額」という。)が二十万円以下であるとき。[1]

長い文なので訳します。この法律は、確定申告書を「提出することを要しない」場合を定めたものです。条件は、会社1か所から給料をもらい、年末調整などで所得税を徴収されていて、給与と退職所得以外の所得の合計が20万円以下、というものです。

国税庁のタックスアンサーNo.1900「給与所得者で確定申告が必要な人」は、同じルールをより身近な言葉で説明しています。

給与を1か所から受けていて、かつ、その給与の全部が源泉徴収の対象となる場合において、各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く。)の合計額が20万円を超える人[4]

つまり「20万円以下なら申告しなくていい」が成り立つには、3つの条件がそろっている必要があります。

  • 給料は1か所の会社からもらっている。2か所以上の場合は、前述のとおり数え方が違います。
  • その給料で年末調整をしてもらっている。
  • 副業などの儲け(所得)の合計が20万円以下である。

ネットオークションやフリマアプリの副収入についても、国税庁はタックスアンサーNo.1906で同じ考え方を示しています。

年末調整が済んでいる給与所得者であっても、その給与所得以外に副収入等によって20万円を超える所得を得ている場合には、確定申告をすれば税金が還付される人を除いて、確定申告が必要となります[5]

なお「還付される人」、つまり払いすぎた税金が戻ってくる人は、20万円以下でも確定申告をした方が得です。医療費控除や住宅ローン控除の初年度などが典型です。

ここまでは噂のとおりです。次から、見落とされがちな2つの落とし穴を見ていきます。

落とし穴① 住民税に「20万円ルール」はない

所得税の確定申告をすれば、そのデータは市区町村にも伝わります。住民税は自動で計算されます。ところが確定申告をしない場合、住民税の申告は自分で別途しなければなりません。

根拠の法律は地方税法317条の2第1項です(e-Gov法令検索)。

三月十五日までに、総務省令で定めるところにより、次に掲げる事項を記載した申告書を賦課期日現在における住所所在地の市町村長に提出しなければならない。[2]

(抜粋)

この法律に「20万円以下なら不要」という特例はありません。杉並区の公式ページにも、所得税の確定申告は不要だが住民税の申告が必要な人の例として、次のとおり書かれています。

給与所得者で、前年の給与所得および退職所得以外の所得金額が20万円以下の方[8]

そして冒頭の「申告不要≠非課税」の話に戻ります。所得税の確定申告が不要なだけです。住民税は普通にかかります。個人住民税の所得割の税率は、杉並区の場合、特別区民税6%、都民税4%で、合わせて10%です[8]。目安として、副業の儲け15万円なら約1万5千円の住民税が発生します。

申告しないまま放っておくと、次のようになります。住民税は市区町村が税額を決めて通知する仕組みです。そのため申告しなかったこと自体に延滞金がつくわけではありません。あとから市区町村が副業を把握して課税します。その納期限に遅れると延滞金が発生します。総務省の資料によると、延滞金の割合は本則では年14.6%ですが、現在は特例で引き下げられています。令和8年は納期限後1か月以内が年2.8%、それ以降が年9.1%です[6]。

さらに、申告の有無は生活にも影響します。杉並区のページには、次の一文もあります。

申告する必要のない方でも、非課税証明書を必要とする方などは、申告が必要です。[8]

住民税の申告をしていないと、正しい所得証明書(課税証明書)が出せず、手当の判定などの手続きに影響が出ることがあります。

住民税の申告は、所得税の確定申告よりずっと簡単です。市区町村役場の窓口や郵送でできます。期限は3月15日です[2]。必要なのは、副業の収入と経費がわかるメモ程度です。

落とし穴② 会社に知られるルート

もうひとつ、よくある心配ごとです。申告をすると、会社に副業が知られるのではないか、という疑問です。

会社員の住民税は、ふつう給料から天引きされています。天引きを特別徴収といいます。総務省の資料によると、確定申告書で特別な申出をしない限り、給与以外の所得に係る住民税も特別徴収に含めて給料から天引きされることがあります[10]。天引き額が急に増えれば、会社の経理が気づくかもしれません。

でも、防ぐ方法が法律に用意されています。地方税法321条の3第2項ただし書です(e-Gov法令検索)。

第三百十七条の二第一項の申告書に給与所得以外の所得に係る所得割額を普通徴収の方法によつて徴収されたい旨の記載があるときは、この限りでない。[3]

普通徴収とは、納付書や口座振替で自分で払う方法です。確定申告書の第二表に「住民税・事業税に関する事項」という欄があります。ここで「自分で納付」にチェックを入れると、給与以外の所得に係る住民税は給料から天引きされません。この欄を知らずに提出すると、翌年6月の給与明細を見た経理に気づかれる、というわけです。

ただし、注意が3つあります。

  1. 「自分で納付」を選べるのは、給料と年金以外の所得だけです。副業がパートやアルバイトの場合は対象外です。副業の給料に係る住民税は、本業の給料と合算して天引きされます[3][9]。
  2. さらに、一部の自治体では扱いが厳格になりました。中野区は、令和8年度から、給与に係る住民税はすべて特別徴収にすると公表しています[9]。
  3. 「自分で納付」を選んでも特別徴収になるケースがあります。申告した所得がマイナスの場合、追加する控除が所得より大きい場合、ふるさと納税などの税額控除が増額税額より大きい場合です[9]。

そのため「必ず知られずに済む」と断言することはできません。住民税以外にも知られるルートは残ります。社会保険の加入状況や、会社の副業規程に基づく届出などが例です。

見落としがちな例外

「20万円以下なら申告不要」には、さらに細かい例外があります。当てはまるものがあれば、金額に関係なく確定申告が必要です。

ケース扱い
同族会社の役員などで、その同族会社から貸付金の利子や資産の賃貸料などを受け取っている人[4]20万円以下でも申告が必要
還付申告(医療費控除、住宅ローン控除の初年度など)をする人[4]20万円以下の副業所得も一緒に申告する
ふるさと納税のワンストップ特例を使っている人[7]確定申告をすると特例が全て無効になる。申告するなら寄付金控除も忘れずに
給与の年間収入金額が2,000万円を超える人[4]副業の有無にかかわらず申告が必要
年の途中で退職して年末調整を受けていない人「年末調整済み」の前提が崩れるので、申告が必要になり得る
公的年金を受給している人[1]年金には別の制度がある。年金収入400万円以下かつ他の所得20万円以下なら申告不要

ふるさと納税のワンストップ特例は、とくに見落としが多い注意点です。総務省の通知(地方税法の施行に関する取扱いについて・市町村税関係)には、次のとおり書かれています。

当該申告書の記載内容及び提出時期にかかわらず、当該申告特例の求めを行った者が申告特例対象年に支出した特例控除対象寄附金に係る申告特例の求め及び申告特例通知書の送付については全てなかったものとみなされ、当該通知書の送付に基づく控除は適用されなくなるものであること。[7]

かみ砕くと、こういうことです。副業のために確定申告をすると、先に提出していたワンストップ特例の申請は全て無効になります。その場合は、ふるさと納税の寄付分も確定申告の寄付金控除に含めないと、控除が受けられません。

こうすればいい

副業や副収入がある会社員は、次の2つの表で自分のケースを確認してください。

所得税の確定申告

副業の所得所得税の確定申告
20万円以下(給与1か所、年末調整済み)不要(還付がある場合を除く)
20万円超必要(翌年2月16日から3月15日)

住民税の申告

副業の所得住民税の申告
20万円以下必要(市区町村へ)
20万円超確定申告をすれば不要(データが連動する)
  • 20万円以下でも:毎年2月から3月に、市区町村役場で住民税の申告をします。窓口や郵送で手軽にできます。住民税そのものはかかるので、納付も忘れないでください。
  • 確定申告をする場合:第二表で「自分で納付」にチェックするかどうかを、自分の状況で判断します。選べるのは給料と年金以外の所得だけです。
  • 20万円と比べるのは所得です。収入から必要経費を引いた額で判定します。副業がパートやアルバイトなら収入金額で数え、他の副業の儲けと合計します。
  • 迷ったら:税務署や市区町村の税務窓口は無料で相談できます。「自分は申告が必要か」の相談は、確定申告の期間外でも受け付けています。

まとめ

「副業20万円以下なら申告不要」は、所得税の確定申告に限れば、条件つきで本当です。住民税の申告は別途必要で、住民税もかかります。20万円と比べるのは、もらった額(収入)ではなく儲け(所得)です。副業がパートやアルバイトなら、収入金額で数えます。会社に知られるかどうかは、申告書の一欄のチェックで変わります。

噂は「条件つきホント」の形をしているときがいちばん危ないです。条件を外すと間違いになるのに、なんとなく信じてしまうからです。数字が出てくる税金の話ほど、その数字が何と比べる額なのか、何の税金の話なのかを確かめてください。


出典

※ 本文は2026年10月4日時点の法令・公式情報に基づきます。出典は法令(e-Gov)、総務省通知、国税庁・自治体の公式ページのみを使用しています。公開後に訂正が生じた場合は、訂正記録をこの記事の末尾に掲載します(訂正ポリシー)。

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